昨年度に引き続き、これまでに取得した89頭のクマの行動情報の解析を行い、どのような要因が個体の行動パターンの決定に影響を与えるのかの検証を行った。具体的には性や齢の違いや、食物資源量の多寡に応じて、クマの行動パターンの変化を検証した。その結果、当初の計画で示した最尤推定法による移動パターンのモデル化の結果、性、齢、食物資源量の違いとともに、季節の違いが大きな要因となり、クマの行動パターンを決定していることが明らかになった。 さらに、実際のクマにカメラ付GPS首輪を装着し、ツキノワグマの食物探索行動や繁殖行動と行動パターンとの関係の検証を試みた。その結果、4頭のツキノワグマに首輪を装着し、行動パターンに影響する各行動としては、食物探索行動、繁殖行動とともに、休息行動の前後も異なった行動パターンを示す傾向が認められた。 また、大阪大学と共同で、照度計駆動型の映像記録装置のクマへの装着試験を動物園において行った。具体的には、照度計と連動した映像記録装置を開発し、飼育されているツキノワグマに装着することで、①装置外箱の物理的な破損の有無、②照度計による記録制御システムの制御状況の2点の検証を行った。その結果、装置外箱の物理的な破損は認められなかったものの、照度計のセンサー部に頸部の体毛が覆うことで照度計が十分の光量を探知することが出来ず、録画を開始することができない時間帯が多数存在した。そのため、今後はセンサー部の位置の変更等が必要と考えられる。
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