公募研究
本研究は、動物装着型GPS記録計による高精度での動物行動トラッキング技術を活用し、地球上で最も長距離を渡る鳥の一種であるハシボソミズナギドリのナビゲーション行動を、1) 海上での餌の発見と獲得にかかわる近距離のナビゲーションプロセス、2) 繁殖地への帰巣という長距離のナビゲーションプロセス、の2つの側面について明らかにすることを目的としている。本年度は年度の当初計画にしたがって、ハシボソミズナギドリの繁殖期である1月と3月にオーストラリア・タスマニアのフィッシャー島で野外調査を行い、繁殖中の親鳥へのソーラーパネル搭載型GPS記録計および加速度ビデオ記録計の装着・回収を実施した。その結果、ミズナギドリが繁殖地から南極海へ合計1万キロほどの距離を往復する間の詳細なGPS移動軌跡を初めて得ることができた。またミズナギドリが30mほどの深さまで潜水を行って他個体と共に魚群を捕食する様子を加速度ビデオ記録計によって記録することができた。野外調査で得られた移動軌跡データについて、海水温や風、地磁気など、様々な環境レイヤーと重ね合わせてナビゲーションのキューを絞り込むための予備的解析を実施した。また年度当初の計画に追加する形で、1月に南極・昭和基地において野外調査を行い、長距離を渡りによって移動するナンキョクオオトウゾクカモメにソーラーパネル搭載型GPS記録計を装着した。また、南極・昭和基地におけるアデリーペンギンの移動軌跡解析について、高橋の研究室所属の大学院生が9月に北海道・大滝セミナーハウスで開催された本新学術領域の若手合宿に参加し、解析手法等について示唆を得て、現在成果を取りまとめている。また本新学術領域計画班生態学班依田憲教授との共同研究として実施した、動物装着型ビデオ記録計をもちいたペンギンのクラゲ捕食行動に関する論文を発表した。
2: おおむね順調に進展している
今回の新学術領域公募研究によって、オーストラリア・フィッシャー島でのハシボソミズナギドリに関するタスマニア大学との国際共同研究を立ち上げることができた。
オーストラリア・フィッシャー島は繁殖地の規模が小さく、ここ数年の繁殖成績が悪いため、当初の想定より調査個体数が少なかった。規模の大きい他の繁殖地での調査に切り替えることを検討する。
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日本生態学会誌
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Marine Ecology Progress Series
巻: 589 ページ: 227~239
10.3354/meps12438
Frontiers in Ecology and the Environment
巻: 15 ページ: 437~441
10.1002/fee.1529