研究領域 | 生物ナビゲーションのシステム科学 |
研究課題/領域番号 |
17H05984
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
武藤 彩 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教 (00525991)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゼブラフィシュ / 捕獲行動 / 視覚 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュは視覚系が行動に発達した昼行性の動物であり、視覚情報をもとに行なうナビゲーションの戦略に潜む神経メカニズムを調べるための系として用いている。 I.獲物を捕獲するまでのナビゲーションの解析を目的として、レコーディングチェンバーに受精後5日目の稚魚を一匹と、獲物に模したビーズを一つ入れて、稚魚の行動をビ デオ記録し、その遊泳パターンを解析した。稚魚の遊泳経路はランダムではなく、稚魚が通りやすい経路、獲物 へのアプローチ時に頻出する経路がある。このことは、記録チェンバーの空間を稚魚の脳が把握して利用してい ることを示唆した。 II.ナビゲーション戦略の時間的発展と変化を調べたところ、捕獲の試行頻度や接近する回数は時間とともに減少した。この観察結果から、目標物が獲物である確率の変化(この場合、減少)に伴いナビゲーション戦略(目標物へ接近 する頻度など)が逐次変更されている可能性が示唆された。 III.ナビゲーション戦略に関与する脳部位の探索と同定を行なう目的で、特定の神経細胞集団の活動を制御してその効果を解析した。我々はゼブラフィッシュにおいてGal4/UASシステムを確立しており、現在までに約1500系統の組 織特異的Gal4エンハンサー/遺伝子トラップ系統を樹立している。この中から脳部位特異的な系統を選び、UAS:TrpV1チャネルを発現させることにより、脳活動を人為的に活性化した。この手法の有効性に関しては、カルシウムイメージングを行ない、たしかに、神経活動が亢進されることも確認した。TrpV1チャネル活性化により、リガンド濃度依存的に捕獲行動に変化が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ稚魚の捕獲行動を記録測定する系を確立し、すでに多数のデータを得ている。また、捕獲行動に関与する可能性のある脳部位の亢進実験を行い、行動に変化を及ぼす神経部位を同定することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本実験は、動物行動の解析手法に関して工夫を要する。例えば、稚魚の行動を画像として経時記録すると、非常に大きなファイルサイズとなりその画像処理を行なう場合には、計算量が膨大なため時間がかかる。データ取得から、解析結果を得るまでの、画像処理等のステップを迅速化する工夫が必要であることが明らかになったので、今後は取得データの解析手法の洗練化も合わせて行なう。
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