公募研究
平成29年度は、まずマウスの社会行動をバーチャル空間で模倣するための多感覚バーチャル環境の確立を行った。この環境では、バーチャル空間に設定したアリーナの一つの角に実際のマウスを模した仮想マウス(アバター)を提示し、対角線上のもう一つの角には対照として楕円球や立方体などの物体を置く。マウスのアバターは、身づくろいなどの実際のマウスが示す自発行動を模したアニメ―ションをランダムに示す。このようなマウスアバターの視覚刺激提示に加えて、アバターに接近したときに匂い刺激(マウス尿などの社会的匂い刺激や、バナナやアーモンドなどの非社会的匂い刺激)を提示したり、アリーナの壁やアバターに非常に接近したときに、ヒゲに空気の吹き付けによる触覚刺激を与えることができる多感覚バーチャル環境を構築した。続いて、海馬の領野特異的in vivoカルシウムイメージングの方法を確立した。特定の海馬の領野の錐体細胞に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスの海馬に、異なる波長の蛍光を発する蛍光カルシウムセンサータンパク質を神経細胞特異的に発現するアデノ随伴ウイルスベクターを微量注入することで、遺伝的に標識された海馬領野を単一細胞レベルでイメージングする手法を確立した。さらにこのトランスジェニックマウスを、自閉症モデルマウスと交配することにより、特定の海馬領野が蛍光タンパク質標識された自閉症モデルマウスを作製した。
2: おおむね順調に進展している
研究初年度である平成29年度は、マウス行動課題の確立、海馬領野特異的in vivoイメージング手法の確立、および今後の実験に用いる自閉症モデルマウスの供給についての見通しが立ったことから、おおむね当初の計画通り進行していると考えられる。
平成30年度は引き続き、バーチャル社会行動課題を遂行しているときの海馬の神経活動をイメージングする。さらに本年度の交配で作製した海馬領野特異的蛍光タンパク質標識自閉症モデルマウスを用いて、上記の課題を遂行中のマウスの海馬活動をイメージングする。もし場所細胞の形成や安定性などに異常が見られる場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬の投与が、その異常を改善するかどうかの検討を開始する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
eNeuro
巻: 4(3) ページ: e0369-16.2017
https://doi.org/10.1523/ENEURO.0369-16.2017
Biomed. Opt. Express
巻: 8(9) ページ: 4049-4060
https://doi.org/10.1364/BOE.8.004049