研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H06001
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
花房 洋 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00345844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | LRRK1 / EGFR / endosomal traffic |
研究実績の概要 |
刺激により細胞膜上で活性化した受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、エンドサイトーシスによってエンドソームに集積し、リソソームへと運ばれ分解される。この時、受容体の一部は細胞膜にリサイクルされ、リソソームによる分解を免れる。最近の研究から、同じ活性化した受容体が細胞膜とエンドソームからとで異なるシグナルを発信し、異なった細胞応答を引き起こすことが明らかとなってきた。我々は、RTKの1つ上皮成長因子受容体(EGFR)に注目し、エンドソームを起点とするEGFRシグナルの制御機構の解明を目指している。昨年度までの解析から、ROCOファミリーキナーゼの1つLRRK1が、小胞体(ER)-エンドソームコンタクトサイト上で、EGFRの脱リン酸化・不活性化に重要なことを明らかにした。またLRRK1は、EGFRのエンドソーム内腔への取り込みにも重要である。これらのステップを制御することでLRRK1は、エンドソーム膜上から発信されるEGFRシグナルを負に制御していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンドソームを起点とするシグナル発信機構の解明を行うにあたり、EGFRシグナルと、それを制御するLRRK1キナーゼとの関係に注目して解析を進めてきた。その結果LRRK1が、ER-エンドソームコンタクトサイト上で、EGFRの脱リン酸化・不活性化に重要なことを明らかにできた。 また現在、エンドソーム上でLRRK1と相互作用する分子をいくつか同定しており、これらの分子との関係を中心にさらなる解析を進められる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、ER-エンドソームコンタクトサイト上で、LRRK1がEGFRの脱リン酸化・エンドソーム内腔への取り込みに重要なことを明らかにしてきたが、その制御機構については不明なままである。現在、LRRK1がコンタクトサイト形成に重要な分子や、EGFRを脱リン酸化するフォスファターゼと相互作用していることを見出している。そこでこれらの分子との関係に注目し、LRRK1によるエンドソーム上でのEGFRシグナルダウンレギュレーション機構の解明を行う。 さらに、LRRK1によるEGFR細胞内トラフィック制御を数理モデル化し、重要なファクターが何か抽出する作業を進める。
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