研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H06008
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岩楯 好昭 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40298170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケラトサイト / 細胞遊走 / ミオシン / アクチン / 牽引力 / ストレスファイバー |
研究実績の概要 |
生物の“かたち”は多様でありその運動機能と密接に関係する場合も多い。例えば、魚は頭が大きく尾が細いことで、自身の後ろで渦が発生するのを防ぎ効率的に泳げる。かたちが運動機能と密接に関係しているのは細胞にとっても同様である。細胞性粘菌アメーバは溶液に浮遊中や基質への接着直後は不定形で移動できないが、間もなく前後極性を生み出し移動し始める。さらにしばらく経つと、半月形となってまっすぐに移動し続けることがある。 半月形となった細胞の移動の直進性や運動速度は不定形の細胞の移動に比べ遥かに上昇することから、この半月形のかたちはアメーバ運動という機能を効率的に実行する最善の形態と推測される。細胞性粘菌アメーバだけでなく、繊維芽細胞、上皮ケラチノサイトなど様々な細胞種がこの形態を示す。生物学的観点から、この半月形のかたちの形成は、細胞種によらない普遍的な現象として興味深い。また医療応用の観点からも、アメーバのかたちや運動特性を人為的に制御できるようになれば、がん細胞の転移制御による正常な組織からの排除や、創傷治癒過程の上皮細胞の移動制御による治癒時間の短縮や傷痕を残さない上皮の修復など、新しい治療法への応用が期待できる。そこで本研究の大きな目標は、アメーバが半月形のかたちになる細胞内シグナル伝達機構を明らかにすることである。 魚類表皮ケラトサイトは、常に半月形を維持し、ヒトのケラチノサイトの50倍の速度で移動するユニークな細胞である。本年度はケラトサイトを用いて、外液の浸透圧をL-グルコースを用いて様々に変化させたときの、細胞膜伸長速度、及び細胞の葉状仮足の先導端付近で見られるアクチンレトログレードフロー速度を測定し、それらの定量的な関係を求めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室の引越しなどがあったが、研究の進捗については概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
セルイラストレータを用いたモデルの作成、アクチンレトログレードフロー速度の細胞先導端の場所による違い等の実験的計測を行う。さらに、細胞膜張力の測定、ミオシン集積の定量的解析に発展させる。
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