研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H06012
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ブレブ / 細胞膜 / アクチン細胞骨格 / Rnd3 / RhoA / 双安定性 / 細胞質 / 細胞運動 |
研究実績の概要 |
細胞膜は恒常的にアクチン細胞骨格に裏打ちされている。しかし、アクチン細胞骨格が一時的に細胞膜から乖離すると、細胞膜は突出する。この細胞膜の突出構造をブレブと呼ぶ。細胞死や細胞分裂に伴って受動的に形成されるブレブと異なり、近年、細胞は能動的にブレブを形成して方向性を持った運動することが明らかになった。 これまでにブレブが形成されて細胞膜が拡大する時期においては低分子量Gタンパク質Rnd3がp190B-RhoGAPの活性化を介してRhoAの活性を抑制するのに対して、ブレブが退縮する時期においては、RhoAが活性化されて、ROCKがRnd3を直接リン酸化することによりRnd3を形質膜から排除するという、RhoAとRnd3の相互抑制機構が存在することを明らかにした。このRhoAとRnd3の双安定な活性化機構(Bistability)が、ブレブが形成と退縮を繰り返す双安定性の本質であるという説を提唱した(Aoki et al. PNAS 2016; Ikenouchi. Cell Cycle 2016)。 今年度は、数理生物学研究者との議論を通して、ブレブの細胞膜動態に関して、これまでの実験結果を元に定性的な数理モデル(双安定モデル)を構築した。次に、実験結果の計測データに基づいて数理モデルのパラメーター解析を行ったところ、双安定モデルだけでは説明できない現象を見出して、再びブレブの形成退縮に関わる新規分子の探索を行った。その結果、2種類のタンパク質がブレブの形成退縮に関わることを見出し、現在これらの分子を考慮に入れたブレブの数理モデルの構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、ブレブの数理モデルを構築し、実験より計測した結果に基づいてパラメーターの妥当性の検討を行った。当初のブレブの数理モデルではパラメーターの妥当性が検証できなかったため、ブレブの形成退縮に関わる新規分子の探索を行った。その結果、2種類の新規分子がブレブの制御に関わることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新たに同定したブレブの制御因子群を組み込んだ数理モデルの構築を進めるとともに、さらにブレブの形成制御に関わる新たな分子機構の探索を進める。
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