公募研究
DNA損傷チェックポイントのシグナル回路を構成するタンパク質、具体的には9-1-1とRHINOとの複合体に関する構造生物学的研究を進めた。9-1-1はRAD9、RAD1、HUS1からなる3量体タンパク質である。損傷特異的に働くDNAクランプであり、中央にDNAを結合する孔を持つディスク状の構造をとる。9-1-1単独の構造はすでに明らかになっているが、相互作用タンパク質との複合体の構造は一例も無い。H29年度はTOPBP1、9-1-1とのシグナリング複合体の構造解析を目指しRHINOの調製を試みたが、全長RHINOは不安定であり、組み換えタンパク質として調製することはできなかった。そこでH30年度は9-1-1との複合体での結晶化に向けてRHINOペプチドをデザインし、結晶化スクリーニングを実施した。その結果、PEGを主な沈殿剤と用いた条件で柱状結晶を得ることに成功した。得られた結晶を用いてつくば高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーのビームラインBL-17Aにおいて、2.4 Å分解能のX線回折強データを収集し、分子置換法によって9-1-1-RHINO複合体の立体構造を決定できた。これまでの研究から、DNAクランプはディスク状構造の片面(表側)を使ってパートナータンパク質と相互作用すると考えられてきた。今回の構造解析の結果、RHINOは9-1-1のRAD1サブユニットのみに結合していた。驚くべきことに、RHINOはRAD1の裏側に結合しており、9-1-1はディスクの両面でパートナータンパク質と相互作用することが示唆された。この成果はDNAクランプの分子間相互作用に関するこれまでの常識を変える発見である。現在、本成果を原著論文にまとめて国際誌に投稿中である。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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