シグナル伝達をシステムとして理解するためには、各反応の速度や持続性といった動的な情報を得ることが重要であり、そのためにはシグナル伝達の時空間的に精密な制御が必要である。最近私たちは、動物の視覚を支える光作動性のGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるロドプシンおよびその類似光タンパク質をツールとして用いた細胞内シグナル伝達系の光制御に成功した。そこで本研究では、GPCRシグナル伝達系をモデルとして、ロドプシンベースの光制御ツールを用いたシグナル伝達系の高時間分解能制御を“細胞レベル”と“個体レベル”の両方で試みている。その結果、平成30年度は以下の成果が得られた。
・開発した光感受性GPCRツールを動物に導入することで、個体レベルでGPCRシグナル伝達を光で制御することに成功し、さらに、そのGPCRが関わる行動までも光で引き起こすことに成功した。 ・従来、シグナル伝達を波長依存的に制御(色制御)するためには、異なるシグナル伝達カスケードを駆動する2種類以上の光制御ツールが必要であると考えられていたが、本研究では、1種類の光感受性GPCRツールを用いてGPCRシグナル伝達の色制御に、培養細胞および個体レベルにおいて成功した。 ・光制御ツールとして有望なロドプシン類についてfloxマウスを作製し、Cre/loxPシステムを用いて、膵臓のβ細胞特異的に光制御ツールを発現させることに成功した。
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