研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H06019
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
篠原 久明 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (10391971)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | シグナルネットワーク / B細胞 / 細胞分化 / シグナル動態 |
研究実績の概要 |
様々な刺激により誘導されるシグナルは、共通のネットワークを介しながら細胞応答特異的な遺伝子発現を制御する情報に変換 (エンコード) される。共通のネットワークを使いながらシグナルを生物応答特異的な情報にエンコードするのは、活性動態であると考えられている。本課題では申請者のネットワーク解析の実績を活かし、B細胞の分化特異的なシグナル活性動態を制御する分子機序を、数理学的に解析する。この解析により細胞分化を特異的に決定する分子機序、蛋白修飾を明らかにする。 免疫B細胞では、転写因子の一つである、NF-κBは抗原受容体を介したシグナル伝達系によって活性化され、シグナル分子の機能が欠損すると免疫不全を招き、逆に過活性が起ると代謝性疾患や癌を誘導する。このシグナルを標的としたシグナル分子であるIKKの阻害剤も開発されている。しかしながら、IKKはシグナルの高度な連結要素であり、かつNF-κB活性動態の律速になっている。その機能阻害は発癌性が指摘されている。一義的な分子の機能ではなくシステムとしてシグナル動態を規定する情報の理解が求められている。また、IKKのみならずシグナル分子ERKの活性動態もB細胞分化に重要な意味を持つと考えられている。ERKとIKKの計時的動態変化は遺伝子発現を介したフィードバックによって制御されているという知見を得ている。申請者が既に同定しているERKとIKKの双方の制御に関わるE3ユビキチン化酵素である分子cIAP、TRAF6お呼びA20の実験に拠る機能解析と数理解析に拠る検証を鋭意遂行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属の異動があり、また異動先の研究施設が未だ稼動していないという不測の事態があったため、予定より研究は遅れている。しかしながら、シグナルネットワークを構成する分子の計時的な会合情報と活性化情報を獲得し、E3ユビキチン化酵素の欠失による動態への影響を観察している。数理モデルによる検証を平行して行い、作用点の推定を急いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
分化の指標である分化マーカーBlimp1を計時的に計測可能な細胞を用意し、E3ユビキチン化酵素の作用点から分化に必要な分子の修飾を解析する。必要に応じて質量分析も行う。
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