本研究では、機械学習・人工知能分野で培われた計算論的アプローチを機能的磁気共鳴・脳イメージング実験(fMRI)と組み合わせることで、「経験から直接学習することが難しい“環境の隠れ構造”を、ヒトがどのように学習しているのか?」について脳の計算という観点から明らかにすることを目指す。具体的には、学習の過程を記述・再現し得る計算論モデルを構築することでその背後にある計算理論やアルゴリズムを特定し、モデルと脳活動の対応を検証することでそれを支える脳機能の解明を目指す。 2017年度は予備的な心理実験を行い、「ヒトは環境の隠れ構造を学習できるのか?」について検証した。実験のおける被験者の行動を解析した結果、被験者が「ある選択肢を選択すると報酬量が減少し,選択しないと報酬量は増加する」という環境の隠れ構造を適切に学習できることが示唆された。今後は被験者の行動や学習の過程を記述・再現し得る計算論モデルを構築することで、「環境の隠れ構造の学習」の背後にある計算理論やアルゴリズムを特定し、モデルと脳活動の対応を検証することでそれを支える脳機能の解明を目指す予定である。 また、2017年度には、WEB上で1200人の被験者を対象にした大規模心理実験を行い、ヒトの学習・意思決定様式と各種の精神疾患傾向との関係を検証した。現在、予備的な解析を進めているが、ヒトの強化学習様式が強迫神経症傾向と相関している可能性が示唆されている。
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