適切な意思決定・学習を行って報酬(水、食料など)を獲得することは我々ヒトを含む動物の生存に不可欠な役割を果たす。具体的には、「(1)選択肢の価値を適切に評価し選択を行い(意思決定)、(2)その結果得られた報酬の情報を基に選択肢の価値を見直す(学習)」というサイクルを回すことが重要である。近年、上記のような意思決定・学習のプロセスが強化学習と呼ばれる機械学習アルゴリズムの一種で記述されることが明らかになりつつあり、心理学、神経科学、生態学、経済学、情報科学など様々な分野で注目を集めている。 また,精神医学の分野では,様々な精神疾患の症状を意思決定・学習(強化学習)の異常と対応させることを目指す試みが盛んに行われている。これまでの研究の蓄積により、統合失調症、強迫神経症、抑うつ、不安症、など様々な精神疾患が意思決定・学習様式の変化を伴うことが報告されている、しかしながら、「これらの精神疾患の全てが意思決定・学習の変化と関連しているのか?」、それとも「これらの疾患に共通な要因(因子)が複数あり、その一部が意思決定・学習の変化と関連しているのか?」はよく分かっていない。 そこで本研究では、1200人の健常被験者を対象に大規模WEB実験を行うことで、以下の二点を明らかにした。 ・様々な精神疾患傾向は二つの共通要因で記述できる。一つ目の要因は主に強迫神経症に関連し、二つ目の要因は主に抑うつや不安に関連する。 ・上記の要因のうち、一つ目の要因のみが意思決定・学習(強化学習)の障害と関連している。
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