環境の変化に応じて多様な意思決定をする能力は、霊長類で特に発達した本質的な脳機能である。この機能に前頭前野が深く関わっていることは明白であるが、前頭前野の情報表現は複雑であり、行っている計算をどのように大脳皮質ネットワークとして実現しているのかを理解することは困難である。本研究では、知覚判断の系に則ったタスクスイッチ課題中に、前頭前野の複数領域から皮質脳波(ECoG)を計測し、神経活動を網羅的に取得する。さらに、情報表現が複雑な前頭前野の神経活動に、深層学習によるデコーディング技術を応用し、柔軟な意思決定を可能にする大脳皮質神経ネットワークを明らかにすることを目標とする。 本研究では、2つの環境に応じて柔軟に判断を切り替えるタスクスイッチ課題をサルに適用し、柔軟な意思決定に重要である前頭前野の神経活動を網羅的に計測する。本年度は前頭葉眼窩面、内側面、外側面を取り囲む極間2.6mmの128chECoG電極を開発し、1頭のサルに留置する手術を行い、タスクスイッチ課題中のECoG信号の計測を行った。従来手法を用い、解析を行った結果、多くの領野において、視覚刺激にタイムロックしたハイガンマ活動、事象関連電位(ERP)、トライアル間位相同期(ITC)を検出できた。また、眼球運動にタイムロックした活動も検出することができた。これらの結果は、前頭前野に課題関連神経活動が見られ、それらをECoG信号として捉えることができることを示している。
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