研究領域 | 人工知能と脳科学の対照と融合 |
研究課題/領域番号 |
17H06029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱口 航介 京都大学, 医学研究科, 講師 (50415270)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | システム神経科学 |
研究実績の概要 |
人工知能研究と脳科学は互いに影響を与え合ってきたが,それぞれの研究が高度化する中で,多くの知見が相互参照されないまま,残されている.脳科学では遺伝子操作技術の発展に伴い,学習(神経可塑性)に関わる分子が数多く同定されてきた.例えば転写調節因子のCREBを遺伝子操作によって活性化したマウスは,長期記憶能力が高まる.またCREBを欠損したマウスは学習が著しく阻害されるため,学習と分子活性の関係を調べる上で重要な分子である.遺伝子操作技術を用いた遺伝子の活性化と欠損によって,分子と行動との相関を調べることができる.しかし分子活性が高まると,なぜ,どのようにして,行動に変化を引き起こすのかは,神経回路をブラックボックスにしたままでは理解できない.恐怖学習に関わる扁桃体の神経細胞は,分子活性の高いものから記憶痕跡(エングラム)に組み入れられる.しかし大脳皮質で起こるような,ゆっくりとした学習において、分子活性の時系列と神経活動の変化の関係は,ほとんど分かっていない. この問題を明らかにするため、初年度は、単純な運動課題を行うマウスから、二光子顕微鏡を用いて分子活性と神経活動の同時観察を行った.当初は2種類のウィルスの濃度を調整し、分子活性レポーターとカルシウムセンサ(RCaMP)を同時発現を試みたが、安定した発現分布を得ることに苦慮した。そこで分子活性レポータおよびカルシウムセンサを二つとも組み込んだウィルスを作成し、均一な遺伝子導入に成功した。運動課題は、聴覚刺激提示後に左右どちらかのスパウトから水を飲む事を学習したのち、反対側から水がでる事を学習させた。この経時的なデータを解析し、現在さらなる運動課題に取り組むマウスからデータを取得中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類のウィルスの同時発現は、実際に観察を始めてみると均一な発現分布を得ることが難しいことがわかった。一般に多くの遺伝子を同時にアデノ随伴ウィルスに発現させるのは難しいが、申請者らはすでに分子活性レポータおよびカルシウムセンサを二つとも組み込んだウィルスを作成し、均一な遺伝子導入に成功した。またすでに長期間(数か月)の皮質の観察に成功しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得したデータの解析、および追加のデータの取得を行う。 データの解析には複数日にわたる3次元で分布した細胞の輝度を安定して追跡する必要がある。また同じ細胞を同定し、その神経活動と分子活性との関係を理解する必要がある。現在これらを行う解析プログラムを作成中である。
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