研究領域 | 人工知能と脳科学の対照と融合 |
研究課題/領域番号 |
17H06030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 謙一 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (90455395)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 人工知能 / ウイルスベクター / 解剖学 |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に開発した狂犬病ウイルス(RV)ベクターを用いた逆行性越シナプス的多重トレーシング法などの先端的回路解析法により、前頭前野―大脳基底核、小脳ループ回路が形成する行動選択ネットワークの構築様式(アーキテクチャ)を明らかにするための研究を行なっている。今年度は、まず独自に開発した狂犬病ウイルスベクターのゲノム改変によって作成した、高発現型狂犬病ウイルスベクターに蛍光タンパク遺伝子を挿入し、同ベクターが従来の狂犬病ウイルスCVS株と同等の伝播能を保持し、ウイルス蛋白の抗体染色法と同等の感染細胞検出能を挿入蛍光タンパク質で実現することを明らかにした。また、GFPあるいはRFPを発現する同ベクターを大脳皮質運動前野の2領域に注入し、同皮質領野が形成するループ回路間における相違(トポグラフィー)と重複(オーバーラップ)のパターンを解析したほか、種類の異なる蛍光タンパク質(XFP)をそれぞれ発現する同ベクターを大脳皮質前頭前野の4領域に注入する実験、GFPを発現する同ベクターを前頭極に注入する実験を実施した。さらに、次年度実施する皮質―基底核ループにおける線条体への入出力解析法のため、アデノ随伴ウイルスベクターのキャプシド改変を行い、霊長類において高い神経細胞選択性と外来遺伝子発現能を両立するウイルスベクターを開発し、Tet-Offシステムを利用した超高発現型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる短生存期間での軸索トレーシングを可能とした。一方、スライドスキャナによる画像撮像および自動ラベルデータ生成と、Matlabベースのプロット修正用プログラム(インターフェース)を利用して逆行性ラベルを半自動的に解析する手法の構築を進めると共に、これらのデータセットを用いたトレーニングによって、画像からラベルデータを出力する機械学習プログラムの作成に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、高発現型狂犬病ウイルス(RV)ベクターの開発、超高発現型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した順行性トレーシングベクターの開発、運動前野背側部と腹側部を含むループ回路の構築様式の詳細解明において当初見込んだ通りの成果を得ており、一部は論文として発表した。また、前頭前野背外側部と眼窩前頭皮質(ブロードマン9野、46野d/v、12野)への注入実験および前頭極への注入実験を実施し、解析を進めており、次年度追加注入実験を実施する予定である。さらに、逆行性ラベルを半自動的に解析する手法の構築に関しても進展が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展していると考えられるため、今後も当初予定に従い、高発現型狂犬病ウイルス(RV)ベクターおよび超高発現型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの同時2領域注入による、皮質―基底核ループにおける線条体への入出力解析法を確立し、運動前野背側部と腹側部を含むループ回路の構築様式の詳細を解明して論文としてまとめる。また、高発現型RVベクターを利用した、前頭前野の各領野からの逆行性トレーシングの解析と並行して、追加の注入を実施し、対象領域を拡大する。さらに、逆行性ラベルを半自動的に解析する手法の構築を進めて上記解析に利用するほか、切片デジタル撮像装置により、薄切につきマクロ画像を自動的に撮像するシステムを利用したラベルデータの3次元化を試みる。
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