研究実績の概要 |
1. 昨年度までに基本となるモデルを確立したSPLICE法(Hirayama et al., ICML2017)の発展形をさらに一般化し、特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と等価な特徴変換を学習可能な階層型統計モデルを開発した。とくに尤度計算を難しくする原因である畳み込み層に関する計算困難性を回避する手法を提案し、提案法のMatlab実装を概ね完了した。シミュレーション実験により、真の潜在変数を適切に復元可能であること、また生成モデルに基づくことで少数サンプルにおける推定精度が向上しうることを確認した。提案法は生成モデルに基づくCNN学習の定式化として初めて近似に依らない尤度ベースの推定を可能にした。 2. 基本SPLICEモデルによるEEG-fMRIデータの解析をさらに進め、EEGからSPLICEで推定した信号源モジュールから同時測定したfMRIへの一般線形モデルによる回帰分析を実施した。既存の脳機能イメージングの知見からEEGモジュールと典型的な安静時ネットワークとの関連が示された。結果として安静時EEGからの脳内ネットワーク推定の正当性をより強めることができた。 3. こうした統計的特徴学習の脳科学応用では脳活動の個人差が大きな問題となる。基礎的な特徴づけのため、多集合に拡張した正準相関分析を用いて課題や安静といった状態変動にロバストに個人差を特徴づける手法を開発した。Human Connectome Project (HCP)から得た500人弱の安静時fMRIデータ解析で検証し、この手法で得た指標値は流動性知能スコア等との有意な相関を示すことが確認された。
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