公募研究
急性疾患の入院患者において、感染症や術後の侵襲の影響によって起こる倦怠および不活動状態などの意志力の低下は、早期離床を目的とした運動療法を継続するための大きな障害となっており、活動への意志力を高める介入が必要とされている。本研究ではリポポリサッカライド(LPS)により惹起された全身性炎症モデルマウスに、オレキシン受容体作動薬YNT-185を予防的に投与した場合、早期に不活動状態が改善するという結果を得た。オレキシン受容体作動薬による早期活動量回復効果は、オレキシン2型受容体欠損マウスには観察されないため、オレキシン2型受容体を介する作用と確認された。同様にYNT185を投与し、LPSを投与22時間後の血中サイトカインレベルを観察した結果、YNT185投与群で対照溶媒投与群に比べて有意に炎症性サイトカインであるTNFα、ケモカインのMIP-1αレベルが低下していた。全身性炎症後の活動量回復に関わるオレキシン受容体作動薬の脳内責任部位について、Fos抗体染色により興奮した脳領域を調べた結果、延髄縫線核セロトニンニューロンを同定した。次に、ePET1-Creマウスとfloxed-hM3Dqマウスを交配し、ダブルトランスジェニックマウスを作成した。このマウスに全身性炎症を引き起こし、CNO投与によりセロトニンニューロンを興奮させた結果、不活動状態からの早期回復傾向は観察されたが統計的な有意差はなかった。延髄縫線核に限局した活性化が必要かもしれない。ePET1-CreマウスにmCherryラベルしたウィルスを延髄縫線核に感染後投射先を調べた結果、副交感神経系(迷走神経)の神経核である孤束核と背側迷走神経運動核、交感神経節前繊維に投射している延髄吻側腹外側野など自律神経系に関わる核に投射がみられ、YNT185がこれらを介して炎症を改善し、活動量の早期回復に寄与していると示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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BRAIN and NERVE
巻: 70 ページ: 1255~63