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2017 年度 実績報告書

社会環境と体内環境の情報を統合する脳のSIRT1の意志力における役割の解明

公募研究

研究領域「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」に関する総合的研究
研究課題/領域番号 17H06050
研究機関群馬大学

研究代表者

佐々木 努  群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (50466687)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード社会敗北ストレス / 拘束ストレス / コルチコステロン / オキシトシン
研究実績の概要

H29年度は、(1)各種のストレスが脳内のSIRT1酵素量と、その活性に必要な補酵素NAD+量に与える影響の検討と、(2)脳特異的SIRT1操作マウスでの行動解析を、行った。
(1)については、急性拘束ストレス、慢性弱ストレス、および社会敗北ストレスの3種類のストレス刺激を用いた検討を行った。評価した脳内部位は、視床下部、側坐核、扁桃体、前頭前皮質、および腹側被蓋野の5か所とした。評価の結果、いずれの箇所においても再現性をもって有意にNAD+量とSIRT1量の変化を認めなかった。以上の結果より、ストレス刺激は、検討した脳内部位でのSIRT1の総活性(補酵素量x酵素量)には影響を与えないと結論付けた。
(2)脳特異的SIRT1操作マウスでの行動解析については、主にSIRT1増加マウスで検討を行った。このマウスでは、ストレス反応のマーカーとなる血中コルチコステロン濃度が、定常状態では高めの傾向が認められた。このデータは、視床下部Crh発現の上昇と合致していた。また、自発運動は有意に高いという初期データが得られたが、意欲行動としての輪回し運動には有意差がなかった。
次に、急性拘束ストレス時の反応を検討した。血中コルチコステロン濃度に差はなかった。また、自発運動、輪回し運動共に有意差を認めなかった。
さらに、社会敗北ストレス刺激時の反応を検討した。血中コルチコステロン濃度は有意に低かった。
別の基礎検討より、脳内のSIRT1は社会刺激に反応してストレス反応を緩和するオキシトシンを正に制御することを発見しており、この度の行動解析から、脳のSIRT1はオキシトシンを介して特に社会ストレス刺激時のストレス反応を抑制することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、ストレス刺激時にSIRT1総活性が変動する脳内部位を探索し、同部位特異的なSIRT1遺伝子操作を行うことで、ストレス反応の制御に対するSIRT1の役割を検討する予定であった。しかし、過去文献に基づき探索した部位に関しては、SIRT1総活性は各種のストレス刺激では変動しなかった。
しかしながら、行動実験の結果から、SIRT1は社会ストレス刺激特異的に、ストレス反応を緩和することを見出した。我々は既にSIRT1が社会ストレス刺激を緩和する作用を持っているオキシトシンを正に制御することを発見しており、この度得られたデータと合致する。
それゆえ、今後はSIRT1とオキシトシンと社会ストレスという切り口で意欲行動への影響を検討すればよいという方向性が明確になった。

今後の研究の推進方策

社会敗北ストレス刺激が与える意欲行動への影響について、脳特異的なSIRT1操作マウスとオキシトシン神経特異的なSIRT1操作マウスを用いて、検討する。現状の仮説が正しければ、SIRT1増加マウスでは、社会敗北ストレス刺激後の意欲行動の減退が抑制され、SIRT1欠損マウスでは意欲行動の減退が顕著になると予想される。
同現象を確認した後、余力があれば、意欲行動への効果を担うオキシトシン神経の投射経路について、逆行性ウイルスベクターを用いて、投射先特異的なSIRT1発現量の操作を行い、評価する予定である。

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公開日: 2018-12-17  

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