報酬に対する動機づけとしてギャンブル試験を、課題に対する動機づけとしてタッチスクリーン式弁別試験を用いることで、意志力を検証できるシステムを構築した。また、orexin BAC-Creラットを用いて、オレキシン神経特異的にDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)を発現させ、動機づけ行動におけるオレキシン神経の役割を明らかにしてきた。 特に平成30年度は、オレキシン神経の活性化は諦めない行動や確率逆転学習にも影響することを見つけ、課題に対する動機づけ行動に影響を及ぼすことが分かった。また、ギャンブル試験の行動データを計算論モデリングしたところ、オレキシン神経を活性化させるとハイリターンに対する期待値が高くなることが分かった。これらの事から、オレキシン神経はやる気・意志力に関わる神経回路の一旦を担う可能性が示され、特に、オレキシン神経は不確実な状況下における報酬に対する期待値に影響を及ぼす可能性があることが分かった。また、オレキシン神経の活性化は摂食量、摂水量を増加させることが分かった。しかし、行動量については影響なかった。これらの結果から、オレキシン神経の活性化は既報と同じように本能行動に影響することが示された。また、現在検討中であるが、蛍光イメージングシステム(ファイバーフォトメトリー)を用いて、動機づけにおけるオレキシン神経活動を測定し、オレキシン神経を光操作したときの動機づけ行動について検討している。このイメージング実験についてはシステムの工夫が必要であると考えている。
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