研究実績の概要 |
平成29年度の研究では、日本国内の男女20-60代の約2,000名を対象として、正直さに関わる簡易的な意思決定課題を中心としたweb調査を実施した。具体的には、Gino et al.(2010, Psychological Science)において用いられている知覚的意思決定課題を利用した。この課題では実験参加者に、正方形の画面が1秒間提示される。正方形には斜めの線が引かれており、両側には点が複数配置されている。実験参加者は、左側と右側のどちらが点がより多いかを判断し、キーボードのボタンを押す。この実験における重要なポイントは、実験参加者にとって葛藤を感じる状況が設定されていることである。すなわち、実際の点の多さにかかわらず、左のボタンを押すと低額の報酬、右のボタンを押すと高額の報酬がもらえる、という設定になっており、正しく回答することと、自分が獲得できる金銭を最大化することが、必ずしも一致しない。したがってズルをしようと考えれば、左側に点が多いように見えたとしても、右と回答するという戦略を取ることができる。実際、この課題では多少のズルをする実験参加者が多いことが先行研究において確認されている。本研究ではこの知覚的意思決定課題をweb調査で行い、さらに報酬・罰感受性、衝動性、共感性など、様々な質問紙によって個人特性に関わるデータを多角的に取得した。 また、本研究ではパーキンソン病を対象とした欺瞞行動の意思決定に関わる神経心理学的研究にも着手した。認知症を伴わないパーキンソン病患者群と、健常対照群を比較した結果、患者群では不正直な行為の頻度が有意に低下しており、報酬系の機能障害との関与が示唆された。
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