研究領域 | 「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」に関する総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
17H06058
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 健一郎 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20587480)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 社会経済的地位 / 抑うつ / Grit / shift-persist strategy |
研究実績の概要 |
社会経済的地位が低い人々にとって,shift-persist strategyが“あきらめない心”を育むことに寄与するかどうか検討するために,以下の3つの調査を実施した。研究1では,あきらめた状態と換言できる“抑うつ傾向の高さ”に着目し,女子短期大学生66名を対象とした検討を実施した。その結果,社会経済的地位の水準にかかわらず,persisting(人生の意味を見出し,将来に希望を持つこと)が抑うつ傾向の低さにつながることが示された。107名の女子短期大学生を対象にした研究2においても,この結果は再現された。さらに,研究3では,Gritの下位因子である“根気”に着目し,850名の社会人調査モニターを対象とした検討を実施した。根気はまさに“あきらめない心”を示していると考えられる。分析の結果,社会経済的地位の水準にかかわらず,persistingが根気の高さにつながることが示された。これらの研究は,平成29年度の日本社会心理学会やSociety for Personality and Social Psychologyの学会大会で発表された。 本申請課題では,shift-persist strategyにかかわる介入研究を計画しているが,抑うつ傾向と根気においてpersistingの効果が認められた点が介入研究の根拠データとなると考えている。一方で,shiftingの効果や社会経済的地位による調整効果が認められなかった点については,関連研究を渉猟しつつ,考察すべきだと考えている。今後,自身の研究成果と関連研究の知見を総合的に考察しながら,より適切な介入計画を設定する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,3つの調査を実施し,今後予定している介入研究の根拠データを得ることができた。さらに,新たな視点からshift-persist strategyの効果について調査的検討を実施するとともに,介入研究にかかわる予備研究を遂行している。当初予定していた実験的検討は,最近の研究知見を踏まえ,実施を留保しているが,その代わりとしてこれら一連の成果が得られたがゆえに,進捗状況は概ね順調に進展していると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
主に2つの計画を持っている。ひとつは,平成29年度の研究成果を踏まえ,大学生を対象としたshift-persist strategyに関する介入研究を実施する予定である。現時点で介入プログラムの内容は決定しており,すぐにでも実施に移行できる状況である。100名を超える参加者を対象にデータ収集を行い,今年度中に学会発表を実施し,論文化する予定である。もうひとつは,抑うつに対するshift-persist strategyの効果,そしてGritに対するshift-persist strategyの効果について論文化し,国際誌に投稿する予定である。なお,現状では抑うつに関する研究を投稿した段階である。査読者との議論を通して,より価値のある研究成果として精緻化する計画である。
|