公募研究
近年、「虐待」や「Hikikomori」など劣悪な成育環境は、成人が患う多くの精神疾患において最高レベルの危険因子であるとも言われ、深刻な社会問題となっている。こうした劣悪な成育環境は意欲ややる気の劣化を引き起こすことが考えられているが、その神経基盤は明らかになっていない。本研究では、申請者らが最近見出した視床下部新規領域PeFAH (Perifornical area of anterior hypothalamus)は意欲を亢進するという仮説を立て、この領域を含む神経回路を光・化学遺伝学的手法によって制御し、意欲亢進の成立における可塑的・特異的な機序の解明を目指す。PeFAHは、室傍核と脳弓の間に位置し、Urocortin3 (Ucn3)とEnkephalin (Enk)を共発現するニューロンを含む。H29年度は、PeFAHのUcn3/Enkニューロン特異的にヒトM3ムスカリン様アセチルコリン受容体Dqを発現させ、CNOを投与して薬理遺伝学的にPeFAHを刺激した際の行動変化について、新奇物体/マウスに対する探索行動について解析した。その結果、マウスは、ホームケージ特異的に、鼻や前足で床敷きを特定の隅へ集めて高く盛り、壁を作るようなPiling行動を示した。これらマウスの不安をオープンフィールド、明暗箱、高架式十字迷路試験によって調べたが、いずれにおいても変化は認められなかった。一方、新奇物体試験では、物体に対するリスクアセスメントや、床敷き存在下では物体を埋めるDefensive buryingの亢進が見られ、潜在的脅威に対する反応が亢進していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Ucn3/Enkニューロンを活性化したマウスは、ホームケージ特異的に、鼻や前足で床敷きを特定の隅へ集めて高く盛り、壁を作るようなPiling行動を示した。これらマウスの不安行動には変化は認められなかった。一方、新奇物体試験では、物体に対するリスクアセスメントや、床敷き存在下では物体を埋めるDefensive buryingの亢進が見られ、潜在的脅威に対する反応が亢進していると考えられた。
今後は、PeFAHのUcn3/Enkニューロン特異的にM4ムスカリン様アセチルコリン受容体Di(hM4Di)を発現させたりジフテリアトキシンを注入し、PeFAHのUcn3/Enkニューロンを抑制した際のマウスの行動について解析する。さらに、PeFAHのUcn3やEnkが意欲の促進に関与することが確認されれば、これまでの申請者の研究によって報酬探索行動の低下が確認されている母子分離マウスを用いた実験を行う。母子分離したマウスにおいて、Ucn3/Enkニューロンの外側中隔内の神経線維投射域にUcn3やEnkを局所投与することによって、症状が改善するかを解析する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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