加齢に伴う前頭前野の衰えは、意欲や実行機能の低下を引き起こす。中・高強度の有酸素運動は前頭前野機能を高めることが報告されているが、多くの高齢者は身体的・心理的な要因からその実践・継続は困難である。近年の研究から、低強度の運動でも実行機能は高まることや、運動による実行機能向上には気分変化が関連する可能性が出てきた。そこで本研究は、高齢者の気分・実行機能を高めるための低強度運動プログラム開発を目的とする。これまで、エアロビック連盟・筑波大学と共同で、体幹の動きを中心としたシンプルな低強度のリズム体操である“スローエアロビック”を作成し、低強度の自転車運動に比べて心理的快適度や活性度がより高まること、そして同程度の実行機能向上効果があることを確認した。本年度は、このリズム体操の気分・実行機能向上効果をさらに高めるために、リズムに緩急をつけるインターバル形式のスローエアロを作成し、高齢者の気分や実行機能に与える効果を一定のテンポでおこなうスローエアロと比較した。その結果、10分間のインターバル形式のスローエアロは、一定テンポの運動に比べて運動中の気分、楽しさをより高め、実行機能を評価するStroop課題の反応時間が短縮する傾向が見られた。これまでの研究から、低強度のリズム体操であるスローエアロビックは高齢者の気分・実行機能を高めるために有効な運動であり、間欠的におこなうことでその効果はより高まることが示唆される。今後は、ニューロイメージング法を用いた運動効果の脳内機構解明や、長期の運動効果の検証が課題である。
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