研究領域 | 稲作と中国文明-総合稲作文明学の新構築- |
研究課題/領域番号 |
18H04174
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保田 慎二 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (00609901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 良渚文化 / 稲作文明 / 新石器文化 / 社会構造 / 墓制 / 中国文明 |
研究実績の概要 |
2018年度は、まず良渚文化に属し、墓が検出されている遺跡の報告書および雑誌に掲載される簡報を収集した。文献リストを作成したのち、遺跡の所在地や立地のほか、良渚文化の墓に関する記載から頭位や規模、被葬者人骨の有無とその性別や年齢、葬具の有無、埋葬方法、副葬品の組成や数量などの要素を抽出し、データベースを作成した。当初の予想よりも小型墓の報告が多いため、本作業は新出資料の公表などに注意しながら継続して進めていく予定である。現状では、上記のデータベースを通して、良渚文化における埋葬習慣の地域性、階層差に起因する墓の規模と副葬習慣の違いを比較的明確な形で抽出できそうである。 また、2018年度には、2回の現地調査および4回の学会発表を行った。9月および2月から3月にかけて中国浙江省で行った調査では、主に良渚遺跡群などで出土土器の実見や現地研究員との最新情報の交換を行うことができた。また、学会参加について、特に6月の南京で開催された東アジア考古学会議(SEAA2018)、10月に成都で開催された中日考古学論壇では、本研究の成果を織り交ぜた報告を行い、有益な意見交換ができた。その他、総合稲作文明プロジェクトで3月に招聘した南京博物院考古研究所の研究員と意見交換する機会があり、大型墓が検出され良渚文化北部で最も重要な遺跡の一つである寺トン遺跡の調査が行われるとの情報を得ることができた。本研究に極めて重要な情報であり、2019年度には現地調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の申請時に想定した研究計画に沿って、ほぼ順調に進めることができている。良渚文化の墓のデータベースについても、主要な墓は入力が済んでいる。ただし、想定以上に小型墓のデータが存在するようであり、これについては継続的に入力作業を行い、より網羅的なデータベースを構築する予定である。また、墓データベースの諸属性間の相関関係の分析を通した階層構造の解明について、現状では大まかな傾向を把握することに成功している。これについても、より詳細な検討を加えて行きたい。 成果の発信については、多くの学会が開催されたこともあり、当初の予定よりも研究内容を発信できたと考える。次年度も引き続き継続して積極的に成果発信を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、最終年度は良渚文化社会の水平的な差異を抽出することを主としている。2018年度の研究によって垂直的な差異、つまり社会階層は大まかに明らかにできる目途がついたので、2019年度は予定通り、水平的な差異についてデータベースをもとにして検討を加える。特に墓の分布などが分かりやすい新地里遺跡などの分析を通して、墓地から集団構造を把握する。必要であれば、A05と連携しながら人骨のストロンチウム分析や安定同位体分析などを行い、外来かどうかなどの検討も行う。 その他、当初の予定にはなかったが、江蘇省の寺トン遺跡の発掘が開始されるため、現地調査に赴く。良渚文化北部の大型墓地の分布構造の確認は、言うまでもなく、本研究に資するものである。 成果の発信については、2018年度と同様、積極的に学会に参加し、研究成果を公表していく。さらに、論文という形で、まとまった成果を発表していく。
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