研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
18H04186
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本吉 勇 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60447034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 認知 / 顔 / 心理物理学 |
研究実績の概要 |
顔認知研究では,多くの顔画像について「どれくらい○○か」という心理値を集めることが格別に重要である.そのための古典的方法としてマグニチュード評定が用いられてきたが,観察者は反応のたびに特定の内的基準に基づいて数値や量に変換する必要があり,社会的ステレオタイプなどの曖昧さをもつ次元で安定したデータを集めるのは困難である.一方で,いわゆる一対比較方法は判断が容易で安定した尺度を得ることを可能にするものの,刺激数が多くなるにつれ,その組み合わせにより必要な反応数が爆発的に増加するという問題をもつ.そこで,少数の試行に基づき多数の顔刺激に関する任意の心理尺度を構成する心理物理学的手法を開発した.この方法では,観察者がN個の刺激から最も○○である刺激を選択することにより,一試行ごとにNの比較判断データを得るとともに,試行ごとに最尤法に基づく心理測定関数の推定と適応的なソーティングに基づき,全ての刺激の心理的な順位と尺度値を推定する.この研究成果は,2つの国際会議および領域班会議において発表され,国内外の多くの研究者より問い合わせを得た.これとは別に,初学者でも容易に本格的な心理物理学実験を極めて短いプログラムで行うことを可能にするmatlab関数ライブラリを開発し,国内学術誌における解説記事の公刊と同時にWeb上で公開した.加えて,研究計画に明記されていたもう一つの柱である自然な顔画像を用いた逆相関法の効率化についても予備的検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に明記されていた主に二つの新たな計測・解析法のうち,一つについては開発にほぼ成功したと言える.しかしながら学会発表などにおいて数理心理学上の問題が残ることも指摘されているため改良が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に明記されていたもう一つの柱である自然な顔画像を用いた逆相関法の効率化は,自然な顔画像の生成方法と逆相関法そのものの改良の二点に基づくものであるが,今年度中に進めた予備的検討によると,いずれも難航が予想される.前者については,観察者の反応とうまく対応する変数に即した画像操作が意外なほど難しい.後者については,かねてより考えていたものと類似の手法がすでに発表されていることがわかった.今後は,これらの問題点を克服することを目指す一方で,異なる視点から逆相関法のすぐれた利用法を発見するなどの方向でも研究を進める予定である.
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