研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
18H04187
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
宮永 美知代 東京藝術大学, 美術学部, 助教 (70200194)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 絵巻 / 伴大納言絵巻 / 中世 / 身体表情 / 顔面表情 / 社会的身分 / 印象調査 / 統計的手法 |
研究実績の概要 |
《伴大納言絵巻》応天門の炎上場面の人物の姿勢を骨格を元にしたスティックピクチャーで表し、官人と庶民の姿勢と動きの諸特徴について抽出した。これを「『伴大納言絵詞』応天門の炎上場面に表現された人物群の姿勢のダイナミズムについての構造からの考察」として、第2回顔・身体学領域会議(2018.6.10 東京女子大学)で、ポスター、及び、口頭で発表した。 第3回公開シンポジウム「トランスカルチャー状況下における顔・身体学の構築」で、自らとは異なる集団の人々の顔をどのように見て絵画や彫刻に表現したのかについて、日本人が表現した8世紀(奈良時代)の伎楽面、「南蛮人図屏風」(安土桃山時代)、西欧の影響を受けた近世から近代の顔の描画について、その変遷を調べた。また、西欧が日本人の顔を表現した例として、近代のRodinの「花子」の首像を検討した。以上は「異国人をどのように描いたのか?:絵画からの美術解剖学的考察」と題して発表した。 西欧絵画を中心に笑顔から見える歯の表現について、描かれた時代の特徴、顔における歯の面積の差異と印象について、「絵画における笑顔 歯の意味を考察する」と題し、2018年度日本図学会秋季大会(2018.12.9 大妻女子大学)で口頭発表した。 前述の応天門炎上場面の官人と庶民の顔面表情印象について、約400人を対象に質問紙法で調査、統計的に解析、「『伴大納言絵詞』応天門の炎上場面に表現された人物群の顔の向きについての考察」として、第3回顔・身体学領域会議(2018.12.26 沖縄県市町村自治会館)でポスター発表した。本内容は、その後、「絵巻物の人物表現に関する統計的分析 --《伴大納言絵巻》における表情認知の研究 1」として、日本顔学会の顔学雑誌に投稿中である(採否未定)。同第3回 顔・身体学領域会議では、異人の顔をどう表現したのかという内容の口頭発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顔・身体学領域会議などが6月、12月と定期的に開催され、そこでの発表が義務づけられたことは、計画的に仕事をする主たる要因となった。また、採否は未定であるものの、昨年度末に、論文「絵巻物の人物表現に関する統計的分析 --《伴大納言絵巻》における表情認知の研究 1」を日本顔学会の顔学雑誌へ投稿することができたことをもって、概ね順調に進展している理由としたい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き《伴大納言絵巻》に登場する人物の表情や姿勢について、顔の向きや顔面器官(目鼻口眉)の形態、及び、表情の類型別化と、顔面表情表出に効果的 に表現されている要素の整理する。身体の動き(身体表情)と顔面表情が共にどのように効果的に働いているのかについての検討を行う。 本年度は2つの悲嘆の場面における顔面表情について、昨年度と同様に数百人を対象に質問紙法による印象調査を行い、 因子分析等の統計的手法を用いた解析を通して、2つの悲嘆の表れ方は同じか異なるのか等について、表情に表れた差異を明らかにする。 貴族社会・文化を描写した《源氏物語絵巻》について、顔面と身体表情を、《伴大納言絵巻》と同様に顔面器官(目鼻口眉) の類型別化と表情表現、顔面表情表出に効果的に表現されている要素の整理、人物の顔の向きや身体の動きが、 顔面表情とどのように関係し、身体表情が顔面表情をどのように効果的に支えているのか、造形上の工夫を含めて、人物の動作姿勢から検討する。 総合的に性差、社会的身分、物語の背景等の切り口から引き続き考察を行っていく。
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