公募研究
本研究課題では、絵画や彫刻などの造形表現において同一の身振りが意味を変化させつつ継承される現象とその背景を、古代ギリシア・ローマ美術の事例から考察した。とりわけ着目したのは「(両)手を上げる」身振りである。というのもこの身振りは単純で基本的な身振りとして、古代ギリシア・ローマのみならず幅広い文化圏に確認できるからである。造形表現における身振りは、実社会の慣習とは無関係に継承されることが多々ある。本研究では、形体の継承と意味の変化を具体的事例から解明することを目標に掲げた。2年目且つ最終年度である本年は、9月に田中がオーストリア、ザルツブルク大学及びドイツ、ミュンヘン大学にて現地研究者と共同研究を行った。また8月、12月の領域会議における口頭及びポスター発表(8月は田中、坂田、12月は3名全員)のほか、10月にはオリエント学会第61回大会にてセッションを企画し、3名によるシンポジウム形式の口頭発表を行った。田中の発表では、ギリシア美術においては両手を上げる身振りが祈願、哀悼、嘆願、驚嘆の意味を持ち、時期により儀礼的身振り、もしくは感情表現との二機能を担ったこと、且つこれら機能の転換が時代様式や社会の心性の変化に起因することを指摘した。小堀は、当該身振りが哀悼から祈りへと変化する過程を、帝室イデオロギーとローマ神学と関連付けて説明した。坂田はドゥラ・エウロポス遺跡(シリア北部)の壁画に着目し、中央ローマの地方支配の一手段として地方的身振りの視覚化が利用されたことを指摘した。3名の研究を通じて、身振りの図像表現を規定するものとして、感情表現と規範概念、宗教的且つ政治的利用の側面を具体的に示すことができた。その後2月には坂田が国際シンポジウムAphrodisias Workshop(東京)にて口頭発表を行った。現在、各自が論文投稿の準備中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Akten des 17. Oesterreichischen Archaeologentages. am Fachbereich Altertumswissenschaften, Klassiche und Fruehaegaeische Archaeologie der Universitaet Salzburg 26-28 Februar 2018
巻: 1 ページ: 527-532
オリエント
巻: 62-2 ページ: 193-194
巻: 62-2 ページ: 194-195
一神教世界の中のユダヤ教-市川裕先生献呈論文集
巻: 1 ページ: 137-162
巻: 62-2 ページ: 195-196
巻: 62-2 ページ: 196-196
DNP文化振興財団 学術研究助成紀要
巻: 2 ページ: 58-67