研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
18H04193
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
月浦 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30344112)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | fMRI / 顔 / 記憶 / 社会 / 加齢 |
研究実績の概要 |
ヒトの顔には多くの社会的情報が含まれており,それらの情報は顔の記憶に対して影響を与える.しかし,顔記憶における社会的情報の影響を媒介する神経基盤については,これまでに十分に理解が進んでいない.また,そのような顔に由来する社会的情報と顔記憶の相互作用を担う神経基盤が,加齢によってどのように変化するのかについても,いまだに多くの点が不明である.本研究では,表情や印象などの顔に由来する社会的情報と顔の記憶の相互作用の基盤となる脳内機構について健常若年成人を対象とした機能的磁気共鳴画像(fMRI)研究から解明し,さらにその脳内機構が加齢によってどのように変化するのかについて,健常高齢者に対するfMRI研究のデータと比較することで明らかにすることを目的とする.
当該年度の成果として,顔記憶の時間順序判断に関連して表情が与える効果についてのfMRI研究の予備実験と本実験を行い,データの取得が完了した.今後はデータ解析を進め,その成果を国際学会や論文で発表する予定である.また,顔の信頼感に関する第一印象とその後の印象の変化によって顔の記憶がどのように変化するのかについてのfMRI研究の予備実験を実施し,fMRI実験のパラダイムを確定することができた.次年度には,当該年度に確定させた実験パラダイムを用いてfMRI実験を開始し,さらにデータ解析を進めてその成果を国際学会等で発表することを予定している.
以上のことから,当該年度はおおむね当初の計画通りに研究を進めることができたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の当初の計画では,顔の新近性判断に対する表情の効果に関連するfMRI研究を健常若年成人に対して実施し,予備実験によるパラダイムの確定と本実験によるfMRIデータの取得完了を計画していた.その計画は当該年度内にほぼ完了することができた.また,顔の信頼感が顔の記憶に与える影響についてのfMRI研究については,当初の計画では年度内に予備実験を実施し,fMRI実験のパラダイムを確定させることを計画していた.現在のところ,パラダイムの確定に多少の困難はあったものの,ほぼ最終パラダイムが確定し,次年度からfMRI実験を開始するめどが立った.
以上のことから,本研究計画はおおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては,顔の新近性判断についてのfMRI研究についてのデータ解析を進めると同時に,その神経基盤が加齢によってどのように変化するのかについて,健常高齢者に対する予備実験を実施し,若年成人と同様のパラダイムでの実験実施が可能であると判断された場合には,健常高齢者に対してのfMRI研究を開始する予定である.顔の信頼感の印象と顔記憶の関連については,これまでに確定させたパラダイムを用いて健常若年成人に対するfMRI研究を実施し,その神経基盤についての研究を進める.さらに,これらのfMRI研究において同定された神経基盤の因果性を検証するため,脳損傷患者に対する行動学的研究を進め,顔記憶と顔に由来する社会的信号との間の相互作用の基盤となる脳内機構の検証を行う予定である.
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