研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
18H04195
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 祥行 京都大学, こころの未来研究センター, 特定講師 (80582494)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 顔認知 / 表情 / 社会的相互作用 / 対人認知 / 他人種効果 / 文化比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、で示された、1対1の対面場面での性格特性の認知と、2者比較場面における関係性の認知が別の判断基準を用いているという先行研究(Ueda & Yoshikawa, 2018)について、呈示されたモデルと観察者が同じ人種だったために暗黙のうちに文化的背景・規範を共有していたことによる影響である可能性を検討した。コーカソイドの顔写真を用いて先行研究と同じパラダイムで実験を実施したところ、先行研究と同じ結果、すなわち、笑顔の人物は対面場面ではドミナントな人物であると判断されないが、2者比較場面ではドミナントな人物であると判断されることが示された。また、同じ東アジア文化圏である台湾で、台湾人参加者に同様の実験を行ったところ、日本での実験と同様の結果が得られた。このことは、笑顔はその人物がドミナントな性格特性を持っていることを示す手がかりではないが、どのような表情の人物の前でも笑顔を作ることができる余裕があるという手がかりを示すことで、2者比較場面で相対的にドミナントであると判断されるとした先行研究を支持するものである。本実験の結果は、このような効果が日本の暗黙的な文化的背景・規範によるものではないことを示唆している。 日本人参加者と台湾人参加者で同様の結果が見られた一方で、笑顔の人物が2者比較場面でどれくらい強くドミナントであると見なされるかについては、文化差が見られた。日本人参加者では、笑顔の人物は2者比較場面で非常にドミナントが高いと評定されたが、台湾人参加者では、笑顔の人物は2者比較場面でドミナントだと評されるものの、日本人ほどその確率は高くなかった。このことは、2者比較場面での対人認知において、表情が文化的に普遍なシグナルと文化特有のシグナルの両方を持っていることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では、1年目に他人種のモデルを用いた実験の実施および文化比較実験の実施を予定しており、1年目が終了した段階で、ほぼ実施計画に沿って遂行できている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に従い、文化比較実験の継続(西洋文化圏における実験の実施)および集団における対人認知を司る神経基盤の解明に向けて準備を進め、研究を遂行する。また、使用している顔画像のクオリティなども結果に影響している可能性が考えられるため、別の顔画像セットも用いて追試を行っていくことも視野に入れて研究を実施する。
|