研究領域 | トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現 |
研究課題/領域番号 |
18H04197
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲垣 未来男 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40596847)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 表情認識 / 高次視覚野 / 扁桃体 / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究は大脳皮質経路と皮質下経路が顔の視覚的な認知過程に果たす役割の解明を目標とする。 霊長類で高度に発達した大脳皮質経路と進化的に古い皮質下経路は顔認知の異なる側面を担うと考えられるが、その解明には同時に並列的に働く2つの神経経路の影響を切り分ける必要がある。申請者はこの問題点に対して、大脳皮質経路処理と皮質下経路処理の計算モデル構築とそれらを利用した新規視覚刺激の作成を提案する。2つの神経経路処理の働きをそれぞれ特異的に強調する操作を加えた顔画像を使って心理実験を行うことで、両者が顔認知のどのような側面に貢献しているのかを明らかにする。特に神経解剖学と神経生理学の実験結果をモデルの拘束条件として利用することで、神経科学の知見に則した計算モデルの構築と視覚刺激作成を目指す。 本研究は(1)神経経路処理の計算モデル化、(2)計算モデルを使った視覚刺激の作成、(3)心理実験の順で進める。H30年度は1つ目の計算モデル化に関して、ヒト顔画像の表情を識別する計算モデルを構築した。神経解剖学の知見(脳の構造的性質)にもとづいて計算モデルの基本的な構造を検討し、大脳皮質は処理階層の多い深層ニューラルネットワーク、皮質下は処理階層の少ない浅層ニューラルネットワークを基本構造とした。次に神経生理学の知見(脳の機能的性質)にもとづいて計算モデルのパラメータを検討した。モデル内部の情報処理ユニットの反応特性が実際の神経細胞の反応特性と合うようにパラメータを調整して、大脳皮質経路と皮質下経路の計算モデルをそれぞれ構築した。次年度はこの計算モデルを利用した視覚刺激の作成と心理実験を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には3つの到達点があり、(1)神経経路処理の計算モデル化、(2)計算モデルを使った視覚刺激の作成、(3)心理実験の順で進めている。H30年度は、このうち1つ目の計算モデル化までが完了した。計算モデル化で使用する計算機のハードウェアやソフトウェアの準備から始めたため、実際のモデル構築を開始したのは年度の半ばであったが、おおむね想定の範囲内であった。2つ目の視覚刺激の作成には同じ計算機を使用するため、H30年度当初のような準備期間は必要ない。また3つ目の心理実験に関しては使用する機器のセットアップをモデル化と並行して進めていたので準備は完了している。H30年度内に済ませておく予定だった心理実験の予備実験は次年度早々に実施し、すぐに本実験へ移行する。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画自体は特に大きな問題もなくおおむね予定通り進行しているので、このまま進めていく。また本研究は新学術領域「顔・身体学」の公募班として進めているため、今後は領域内の他の研究者との連携を積極的に進めていきたい。研究の過程で心理実験に使用する新規の視覚刺激の作成を行うが、他の研究者にも必要に応じて使ってもらえるにアウトリーチや成果物の公開なども検討していきたい。
|