ヒトのコミュニケーション基盤を実証的に解明する上で、顔が、視覚情報のプラットフォームとして果たす機能を無視することはできない。本研究は、顔刺激(形態)が持つ「美しさ」「かわいさ」そして「不気味さ」という属性に着目し、これらの印象を喚起する顔刺激特徴の関係について、合成顔をもちいた実験によって検討することを目的とした。 2019年度は、東京大学で開催された日本語用論学会の招待シンポジウムをオーガナイズするとともに発表者としても登壇し、研究成果を発表した。また、本研究の連携研究者である小林洋美が、関連の学術論文を含む学術論文を広く紹介する著書(「モアイの白目」東京大学出版会)を出版し社会的なアウトリーチをおこなったことも付記したい。 また、大学院生とともに実験を遂行してきた、合成顔を用いた乳児期における自己顔認知の発達研究に関して、追加実験と論文の修正を終了し、再投稿中である。また、プラットフォームとしての顔を介したコミュニケーション発達を示す顕著な事例として、自発的な表情の同期が乳児期後期には出現し、またこの現象が刺激提示を反復することによって増強されることを新たに見出した。この成果はInfant Behaviour and Development誌に掲載された。また、1歳児期ですでにエージェントの身体の空間的配置(上下位置)が社会的評価に影響を及ぼすという新たな知見をとりまとめ、英語学術論文として英国王立協会誌に掲載した。「美しさ」「かわいさ」「不気味さ」に関する知見に関しても、現在追加データ取得を進めとりまとめている。
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