当初計画通り、次の5つの研究を実施した。 第1は、約450人の残留日本人を対象としたインテンシヴなインタビュー調査の最終的な分析である。昨年度、既に音声データの日本語への翻訳と文字情報化は完了したので、本年度はデータの正確さを一層高めるための資料間照合・点検作業を行い、最終的な分析、及び、分析結果の歴史・社会的意義の考察を行った。その成果は、研究発表欄に記している。第2は、残留日本人と接点をもつ関係者(市民活動家、法律実務家、行政担当者等)へのインタビュー調査である。特に当該新学術領域研究(「和解学-正義ある和解を求めて」)の中で「市民運動班」に配属されたので、市民運動に関するインタビュー調査・資料収集を重点的に実施した。第3は、残留日本人をめぐる「和解の想像」に夜間中学校が果たした役割について歴史的史料の収集・分析を推進した。中国からの引揚者、および、日本に帰国した残留日本人(二世等を含む)の生活や社会諸関係の形成に夜間中学校が果たした役割を、歴史的史料、特に1960年代末から現在に至るそれの中から抽出・整理し、分析を行った。第4は、本研究で得られた知見を、「和解学-正義ある和解を求めて」という新学術領域に明確に位置づけ、具体的には「和解学事典」への執筆、および、『和解学叢書』(第4巻)の分担執筆を行った。これらについては近刊だが、既に双方とも完成原稿を提出済みである。そして第5に、諸学会、学術雑誌での発表以外に、開設したHP(「尊厳ある和解を求めて」)・マスメディア(西日本新聞、神戸新聞、日本経済新聞等)でも研究成果・関連情報を公表・発信した。
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