厚さ36nmの金薄膜に収束イオンビームにより直径800nmの半円を配列した連続アーチ構造を作製し、周期より長い波長(800~1600nm)の円偏光ナノ秒パルスレーザを照射して、光起電力を測定した。垂直入射において、この波長では回折は生じないが、アーチ構造によりy軸方向の対称性が破れているため、x軸方向に起電力が発生し、その符号は円偏光の向きに依存することを見出した。一方、x偏光およびy偏光では対称性が保たれているため、x軸方向の起電力は発生しない。 電磁場シミュレーションによって電磁場状態を解析したところ、円偏光励起により単位胞内の光励起状態がx方向に連続的にシフトすることで、定常的なポインティングベクトルが発生し、それが起電力を生み出していることが明らかとなった。当初実験で得られた起電力とポインティングベクトルの流れから予想される起電力の符号が逆になるという問題があったが、詳しく調べてみると、実験で使用した四分の一波長板の軸の方向が表示と90度異なっていることが分かった。(この波長板を販売している会社もそのことを認めている。) 連続アーチ構造のデザインでは発生した起電力がショートされにくい構造となっており、そのことが三角孔構造正方配列などのこれまでのデザインよりも起電力が大きいことの原因となっていることが推察される。 連続アーチ構造の電磁場バンド構造を調べるため、円偏光励起で角度分解透過スペクトルも測定したところ、左右の円偏光で透過スペクトルが異なることが実験及び数値計算で確認された。右回り円偏光における入射角θの透過強度は左回り円偏光における入射角-θでの値に一致している。
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