公募研究
本年度は、時間反転対称性の破れたワイル物質(ワイル超伝導、ワイル磁性体)の研究を行うために、従来の走査型SQUID顕微鏡の改良に取り組んだ。具体的には、(1)SQUID顕微鏡の走査範囲の拡大、(2)従来のSQUID顕微鏡の運用を希釈冷凍機温度まで拡張、(3)横磁場銅マグネットの作製を行った。(1)に関しては、ベンディングピエゾ素子を使った走査システムを自作することで、走査範囲を5x5倍ほど広げることが可能になった。これによって、より短時間に測定することが可能になるとともに、大きな試料の精密な走査も可能になる。(2)を実現するためには、SQUID素子用にノイズの影響に強い同軸線10本とピエゾシステムのために低抵抗線6本を通す必要がある。これらの測定線は、通常のマンガリン線などと比べて熱を運びやすいため、緻密な配線が必要となる。現在、配線中であり、近日中に完了する予定である。(3)については設計済みで、近々発注する予定である。上記の研究以外にも、κ-H3(Cat-EDT-TTF)2がどのようなメカニズムで量子スピン液体状態を実現しているのかを解明するために、元素置換系であるκ-H3(Cat-EDT-d4-TTF)2とκ-H3(Cat-EDSe-TTF)2、κ-H3(Cat-EDT-ST)2の磁気トルク測定を行った。これらの磁気トルク測定は2年前に行なっていたが、カンチレバーなどのバックグランドの影響が大きく、試料の磁気信号を評価できていなかった。今回はバックグランドの影響を取り除くことで、精密に試料の磁気トルク信号を抽出しすることに成功した。この内容は、物理学会で発表している。
3: やや遅れている
上記(研究実績の概要)で報告した通り、時間反転対称性の破れたワイル物質の研究を行うために、従来の走査型SQUID顕微鏡の改良に取り組んでいる。主に3つのパーツを作成しており、着実に準備が進んでいる。来年度中には、改良したSQUID顕微鏡をワイル超伝導体の研究に適用し、研究を完了させる予定である。現在のところ、少し研究進捗状況が遅れていると考えている。
今後は、ワイル超伝導体の局所直測定を行い、時間反転対称性の破れに関連した「自発磁化」の直接観測に取り組む。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
Phys. Rev. Lett.
巻: 121 ページ: 097203
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.097203
巻: 120 ページ: 217205
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.120.217205
巻: 120 ページ: 177201
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.120.177201