公募研究
電気ホール効果は、線形応答理論の枠組みでは時間反転対称性が破れた状態でなければ生じない。ところが近年、非磁性物質において外部磁場を印加しない状態でも電気ホール効果が現れる可能性が提案された。この理論の最も重要な点は、非線形応答領域まで拡張してホール効果(非線形ホール効果)を考慮していることである。この非線形ホール効果の研究は、空間反転対称性が破れた非磁性物質におけるベリー曲率を検出できる可能性があり、ベリー曲率に起因する輸送特性に関する新たな知見を得ることが期待できる。しかし現在までのところ、非線形ホール効果の研究は、WTe2薄膜試料を用いた低温測定に限られており、応用を見据えるとバルク試料を用いて室温付近まで非線形ホール効果が現れる物質探索が必要不可欠である。そこで本研究では、バルク試料で非線形ホール効果が理論的に計算されている物質として、らせん構造を有する非磁性半導体テルルに注目し、非線形ホール効果測定を行った。テルルの非線形ホール効果は、室温に近い温度領域でも観測することができた。また、4.2 Kでの非線形ホール効果の符号はキラリティー(らせんの巻き方)を変えると反転することが分かった。以上の実験結果は、第一原理計算によって予想された振る舞いと合致しており、非磁性キラル物質のテルルにおいてもベリー曲率双極子が伝導特性に影響を与えていることを示している。バルク試料でベリー曲率双極子由来の非線形ホール効果が観測された例は、本研究が初めてである。これらの内容に関して、近日中に論文として投稿する予定である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Phys.: Condens. Matter
巻: 32 ページ: 074001
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-648X/ab50e9