研究領域 | トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
18H04214
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤岡 淳 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80609488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / トポロジカル量子現象 |
研究実績の概要 |
1)自発的対称性の破れによる異常な電荷・熱輸送および光学応答の探索 Nd2Ir2O7,(Nd0.5Pr0.5)2Ir2O7において、反強磁性転移温度直下の狭い温度領域で生じるワイル半金属相でベリー位相による異常ホール効果を観測した。正味の自発磁化はIrサイトあたり1ミリmu_B程度の極めて小さい値であるが、異常ホール伝導度は強磁性半導体と同程度であることが分かった。理論計算の結果、自発磁化成分ではなく反強磁性の秩序パラメータによってベリー位相が決まっていることが明らかになった。 2) 強相関ディラック電子の量子現象探索 超高圧合成法を用いて、強相関ディラック半金属であるペロフスカイト型イリジウム酸化物CaIrO3の単結晶合成に成功した。希釈冷凍機を用いて低温磁場下での磁気輸送特性の測定を実施した。その結果、0.12Kにおいて60,000cm2/Vsを超える高い移動度を示すディラック電子が生じていることを示した(既知のバルク酸化物半導体の中では最大の値)。また、磁気抵抗にディラック線ノードバンドに固有の2種類のシュブニコフドハース振動が現れることが分かった。電子相関効果を正確に取り込んだバンド計算を行ったところ、実験結果を整合することが分かった。 同系列のSrIrO3においてIrをSnで部分的に置換する事で半金属・絶縁体転移が生じる事を示した。ここでは多結晶試料を超高圧合成法を用いて合成した。光学伝導度の測定によって転移に伴って1eVのスケールで電荷ダイナミクスが変化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)自発的対称性の破れによる異常な電荷・熱輸送および光学応答の探索 Nd2Ir2O7,(Nd0.5Pr0.5)2Ir2O7の単結晶育成が順調に進み、反強磁性相における磁気輸送特性の評価が実施できた。特に反強磁性転移温度直下のワイル半金属相で異常ホール効果が生じることを検出することに成功した。 2) 強相関ディラック電子の量子現象探索 精密物性測定が可能な高品質のペロフスカイト型イリジウム酸化物AIrO3(A=Ca,Sr)の合成が順調に進み、磁気輸送特性の評価を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
パイロクロア型Eu1-xCaxIr2O7においてフィリング制御方モット転移の近傍でワイル半金属相の探索を行う。また、ワイル半金属相、常磁性ゼロギャップ相における熱輸送特性の評価を推進する。 ペロブスカイト型CaIrO3において電子相関効果による電子状態の制御、カイラル異常などの異常な電磁気応答の探索を推進する。具体的には磁気輸送特性の圧力依存性を調べることで静水圧によって一電子バンド幅を制御した際のディラックバンドの変化を明らかにする事を計画している。また、パルス強磁場中での磁気輸送特性を調べることで量子極限における量子輸送の知見を得ることを計画している。
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