研究実績の概要 |
バンドギャップの零点(ノード)がブリルアン域中の線上でつながっている線ノードは新しいタイプのトポロジカル半金属として興味深い対象となっている.その基本的な性質はこれまでの研究でその大部分が明らかにされつつある. 本研究では,磁性体においてはこれまでに知られていないタイプの線ノードが現れうることを指摘した[Y. Ominato, A. Yamakage, and K. Nomura, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 114701 (2019)].この線ノードの安定化には磁性体がもっている磁気鏡映対称性が重要な役割を果たしており,その対称性を破らない限りは容易面内で磁化を回転させても線ノードは存在し続ける.磁性体の磁化の向きはスピントロニクスなどの輸送現象に影響を与えるので,本研究の結果は線ノードに由来する現象の基礎研究として重要である. また,線ノード半金属物質における超伝導状態,特に,トポロジカル超伝導状態におけるマヨラナ粒子を解析するための基礎理論について進展があった.マヨラナ粒子は電荷中性なので,観測が難しいというのがこの分野の根本的な困難の一つである.本研究はトポロジカル超伝導物質の対称性とマヨラナ粒子がもつ電磁多極子演算子の関係を一般的に明らかにした[S. Kobayashi, A. Yamakage, Y. Tanaka, and M. Sato, Phys. Rev. Lett. 123, 097002 (2019); Y. Yamazaki, S. Kobayashi, and A. Yamakage, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 043703 (2020)].これは外部電磁場によるマヨラナ粒子の測定方法の基礎を与えるものであり,今後の実験研究への展開が期待される.
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