研究実績の概要 |
トポロジカル結晶絶縁体は、結晶の空間反転対称性に守られた表面状態を有し、結晶対称性の低下や時間反転対称性の破れによってギャップを開く。このことから、結晶対称性を基板からの格子歪として制御することで、バンド絶縁体状態と量子異常ホール状態を外場電場によって制御しうることが理論的に予測されている(C. Feng et al., PRL (2014))。本研究ではそのための材料開発として、トポロジカル結晶絶縁体であるSnTeを分子線エピタキシー法によって合成し物性開拓を行った。本年度は前年度に引き続き、SnTeにPbやInをドーピングすることによる電荷輸送特性の変化を重点的に調べた。(Sn,Pb,In)Teの輸送特性はPb、In濃度によって大きく変化し、SnTeに近い組成では、Inドーピングによって正孔型キャリヤーが増大し、x(Pb)=0.3-0.5,y(In)~0.2で超伝導が発現した。一方で、Pb濃度を高くするにつれてキャリヤーが減少・抵抗は増大し、x=0.7,y=0.2付近で絶縁体へと転移した。更にPb濃度の高い領域ではキャリヤーの符号が正孔型から電子型へ反転し、量子振動を含む高移動度な電荷輸送特性を観測した。観測された抵抗変化はトポロジカル結晶絶縁体相からバンド絶縁体状態へのトポロジー変化に対応すると考えられる。また、電界効果デバイスにおける電気抵抗のゲート電圧変調を通じて、強誘電的振る舞いが輸送現象にあらわれている可能性を指摘した。
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