研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04232
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 不斉酸化 / アルコール酸化 / 空気酸化 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者らが独自に見出し発展させてきた有用な化学選択性を発現する協奏触媒システム:配位子複合型アザアダマンタンN-オキシル (AZADO) と銅の協奏触媒系の精密構造修飾を鍵として、分子複雑系における高難度アルコール選択的不斉空気酸化反応を開発するとともに、その合成化学的有用性の実証を目的とするものである。 計画研究の初年度に当たる平成30年度は、AZADO-Cu協奏触媒の不斉反応への展開を目指して、課題が山積された状況となっていた高難度反応、すなわち、脂肪族ラセミ第2級アルコールの高エナンチオ選択的速度論的光学分割を可能とする触媒システムの開発を目指した。具体的には、前年度までの採択研究において見出していた不斉配位子複合型ニトロキシルラジカルによる第2級アルコールの酸化的速度論的光学分割のエナンチオ選択性発現機構の理解と選択性の向上を目指して検討を行った。 その結果、N-メチルイミダゾイル基を特徴とする三座配位型キラルAZADO/Cu系 がtrans-2-フェニルシクロヘキサノール類を基質とした場合に95% eeにも達するエナンチオ選択性を発現するとともに、電子豊富な芳香環や三級アミン、スルフィド等の酸化反応条件に不安定な官能基の共存を許容することを確認した。本知見に基づき、三座配位型キラルAZADO/Cu触媒系によるOKRのエナンチオ選択性発現機構の理解を目指して、trans-2-フェニルシクロヘキサノールをモデル基質としてDFT計算による遷移状態探索を行った結果、オキサゾリン部がアピカル位を占める四角錐型錯体を経てアルコールα位の水素引き抜きく機構を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラセミアルコールの速度論的光学分割反応で未到となっていた脂肪族2級アルコールの高エナンチオ選択的酸化反応を実現する独自の触媒系を確立することができた。加えて、精密修飾三座配位型キラルAZADO/Cu協奏触媒によるtrans-2-フェニルシクロヘキサノール類の空気酸化系についてDFT計算による遷移状態探索を行った結果、オキサゾリン部がアピカル位を占める四角錐型錯体を経てアルコールα位の水素引き抜きく機構を見出し、これよりAZADO/Cu協奏触媒に基づく高難度アルコール酸化の有用性展開の基盤を築くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の検討で最適化した新規キラルAZADO群を用いて、基質適用性の拡張を目指した検討を行う。AZADO/銅触媒系を用いるアルコール空気酸化反応の特長を発揮させるべく、無保護のアミノ基を含む幅広い官能基を基質に組み込み、不斉補助基や不斉合成素子への連結を図る。また、エナンチオ選択性が不十分であった基質について、触媒構造の微調整を行いエナンチオ選択性の改善を図る。また、ラセミ第2級アルコールの酸化的速度論的光学分割反応に加えて、メソジオールの酸化的非対称化反応への適用性を検証する。
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