研究実績の概要 |
令和元年度は以下の研究を行い、令和2年度にかけて学術誌論文に報告した。 (1) 計画班員である北海道大学の澤村教授と共同で、イリジウムと窒素およびリン配位子を含む不斉プロリノールーホスフィン誘導体との協同触媒によるケトンのエナンチオ選択的還元反応を報告した。この研究では、t-ブチルフェニルケトンのような、かさ高いケトンでも高立体選択的( >99 %ee)に反応が進行することが明らかになったほか、エナンチオ選択性の説明に、プロリノールーホスフィン誘導体のC-H・・O相互作用やピロリジン環のC-H結合および基質のフェニル基とのC-H/π相互作用など非共有結合性相互作用が重要であることを、DFT計算(B3LYP+D3(BJ)-PCM/def2TZVPP//B3LYP+D3(BJ)/def2SVPレベル)およびそれらの電子密度解析によっても明らかにした。 (2) 国際共同研究 昆虫病原糸状菌から単離されたorbiochromone Aおよび木材腐朽担子菌Ganodermaから単離されたganocolossusin AおよびDの電子円二色性スペクトルと、TD-DFT計算の結果と比較して、その絶対立体配置を決めることができた。タイ・BIOTECの伊坂雅彦博士との共同研究で示した。さらに、バナジウム-N-サリチリデン型配位子協奏触媒によるオレフィンの1,2-酸化的トリフルオロメチル化反応を、台湾国立清華大学のChen教授らと報告し、触媒の空気酸化の後に起こる1,5-水素移動の段階でバナジウムのアピカル位に結合しているオキソ配位子が基質の水素を引き抜いていることが実験とDFT計算によって示唆された。
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