研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04235
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00284084)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高難度変換 / フッ素 / フルオロカーボン / トリフルオロメチル化 / クロスカップリング / 触媒 |
研究実績の概要 |
有機フッ素化合物は,医薬,農薬,液晶化合物,高分子材料など様々な産業分野において利用されている。芳香族化合物へのトリフロオロメチル基の導入反応が世界中で活発に研究されており,これまでに多様な反応例が報告されてきた。一方,テトラフルオロエチレンなどのフッ化アルケンの主原料であるクロロジフルオロメタンはトリクロロメタンとフッ化水素から製造するが,その際にフルオロホルムが大量に副生する。厄介なことに,フルオロホルムは地球温暖化係数が非常に大きいガスである。人類がポリ(テトラフルオロエチレン)を使い続ける限り,フルオロホルムを産出し続けると言っても過言ではない。フルオロホルムを有機化合物のトリフルオロメチル化に用いることができれば,フッ素化資源物質の有効利用となりうる。2018年に柴田らは,ポリエーテル系溶媒中で,汎用塩基の1つであるt-BuOKを用いて,フルオロホルムからトリフルオロメチルアニオン種の発生とカルボニル化合物への付加反応に成功している。私たちは,柴田らとほぼ同時期に,さらに安価な塩基である水酸化カリウム(KOH)を用いるフルオロホルムの活性化法を見出だした。DMSO溶媒中でのH2OのpKaが非常に大きくなることに着目し,フルオロホルムを用いる簡便な求核的トリフルオロメチル化反応の開発に至った。さらに,ケイ素化合物を用いる無触媒トリフルオロメチル化反応を開発した。CF3SiMe3を用いるカルボニル化合物の求核的トリフルオロメチル化反応において,無触媒条件の適用の可能性を調査した。反応溶媒としてDMF,NMPなどのアミドの使用が鍵となる。本反応は,吸湿性が高いフッ化カリウムなどの活性化剤を必要せず,市販のCF3SiMe3をそのまま利用して,温和な条件で反応が進行する点で,学術的にも実用的に有用性が高いと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリフルオロメチル化に有効な反応系を見出だし,今後の研究に活かせるから。
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今後の研究の推進方策 |
フルオロホルムをトリフルオロメチル源として用いる触媒反応の検討をさらに進めていく。
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