研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究で、ホスホイミノビナフトール配位子(PIB)-パラジウム二核錯体を開発し、N-Bocアルジミンとマロノニトリルのdouble Mannich反応による1,3-diamineの触媒的不斉合成に成功している。 本年度の研究では、基質にアルキルマロノニトリルを用いることにより、四級炭素に隣接するキラルアミンの触媒的不斉合成をおこなった。本反応の汎用性は高く、様々なアルキルマロノニトリル、並びに各種N-Bocアルジミンに対して、高不斉収率にて目的のMannich生成物を得ることができた。 一方、PIB配位子は酸化に不安定であるため、実用面に課題があった。そこで、3,3’-ジホルミルビナフトールと入手容易なベンジルアミンからベンジルイミノビナフトール(BIB)配位子を開発した。BIBの合成に必要なキラルジアミンは種々市販されており、高い構造多様性を確保できる配位子設計である。また、合成も容易で3,3’-ジホルミルビナフトールと各種ベンジルアミンからエタノール中でイミンを形成するのみで得ることができる。 新規に合成したBIB配位子はPIB配位子と同様、酢酸パラジウムと安定な2核錯体を形成し、N-BocアルジミンとベンジルマロノニトリルのMannich反応では91%収率、90% eeにて目的物を与えた。更に、より脱保護の容易なN-Cbzアルジミンを用いたところ、94%収率、89%eeにて目的物を得ることができた。イサチン由来のケチミンとアルキルマロノニトリルのMannich反応にも適用でき、フェネチルアミンを用いて合成したBIB配位子を用いることで、最高90%収率、90% eeにてMannich生成物を得ることができた。
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