研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04239
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
生長 幸之助 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (00583999)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 有機合成化学 / 均一系触媒 / クロスカップリング / 有機ラジカル / C-H活性化 |
研究実績の概要 |
石油化学領域や創薬分野の発展に実効性の高い高難度変換であるC(sp3)-H変換法の拡充を目指し、ラジカル共役型錯体触媒群の創成および構造―反応性相関調査を行った。 具体的にはスルホンアミド含有配位子を備えるニッケル錯体触媒を実際に合成し、そのC-H活性化能と クロスカップリング触媒能の評価に取り組んだ。 Ritter らの報告に従い合成したニッケル錯体を、 Doyleらの報告を参考にした可視光照射条件に附す検討を行なった。 しかしながら現在のところ、望む反応の進行は確認されていない。スルホンアミジルラジカル発生過程に問題があることが考えられるため、HAT種が生成しているかどうかについて、 ラジカルアクセプターと配位子そのものを反応させる条件などを用いて、その過程を精細に確認していく必要がある。 一方、これと並行する形で進めていたもう一つのプロジェクトでは目立った成果が得られ ている。すなわち、ボリン酸触媒を用いるボレート 型 bond-weakening 現象を活用することで、アルコールα位C(sp3)-H官能基化を高収率・高化学選択的に進行させる触媒反応開発である。MacMillan らの条件を参考に初期検討を行なったところ、様々なアルコールに対して C-Hアルキル化反応が進行した。ボリン酸触媒なしだと収率が大きく低下する。今後は本触媒系に金属触媒を連関させるなどの方針に従い、より幅広い反応形式や不斉触媒化などへ対応させる検討も併せて行なっていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたラジカル共役型錯体触媒系は上手く機能しておらず、設計に見直しが生じている。一方で並走させていたプロジェクトからボレート形成によるC-H結合弱化という新規触媒設計概念を見いだすことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
検討過程で見いだされた新概念「ボレート形成によるアルコールα位C-H結合弱化現象」は、新たな考え方に基づくラジカル共役型錯体触媒系の設計につながることが期待される。今後しばらくはこちらの検討に注力し、論文化を目指す。
|