研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04242
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
本倉 健 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (90444067)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 固定化触媒 / 担持触媒 / 有機分子触媒 / 表面協奏効果 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、固体表面の特異な反応場を利用した有機分子、金属錯体、あるいは表面官能基が関与する触媒反応の加速効果の解明を目指した。有機分子触媒を酸化物表面に固定化した触媒では、固定化後の触媒の種々分光法による構造解析や組成分析を行い、固定による構造変化の有無について解析を実施中である。種々の固定化方法を試み、それらが触媒活性および選択性に及ぼす影響を共同研究によって調査している。さらに、有機分子だけでなく、金属錯体を固定化した際の構造解析も同様に実施し、担体の表面官能基と錯体の協奏的な触媒作用によってアリル化反応が加速されることを見出した。特に、アリル化剤の中でも反応性が低く活性化が難しいとされているアリルアルコールの反応において、シリカ表面のSi-OH基の弱酸性質によってC-O結合の開裂が促されることを見出し、水のみを副生成物とする求核剤アリル化反応を実現した。固定化触媒であるため、反応後の分離も容易であり、実用性の高い合成反応系が確立できつつある。本成果に関しては既に論文を投稿、受理されており、学術誌の表紙に採択されるなど国内外で高く評価されている。加えて、有機分子そのものの新しい触媒作用に関しても研究を進めており、関連する総説論文を2件発表している。特に、シンプルなアンモニウム塩触媒が二酸化炭素の転換反応へ利用できることを既に見出しており、来年度へ向けて、これらの有機分子触媒の固定化と、固体表面での協奏的触媒作用について研究を進めてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究において、有機合成反応における活性を維持した状態での固体表面への有機分子触媒の固定化手法についてはほぼ確立することができ、それらの構造解析についても進めることができた。加えて、金属触媒を用いる系において固体表面で発現する新たな触媒作用を見出し、国際誌へ論文発表をすることができた。この発見は、有機分子触媒においても同様な表面協奏効果の発現へ向けて重要であると考えられる。さらに、有機分子触媒が液相で示す二酸化炭素変換反応における新たな触媒作用を発見し、この触媒系に関する総説論文を発表することができた。以上より、当該研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究では、これまでに開発した固定化有機分子触媒の構造解析をさらに進展させるとともに、共同研究を通して触媒の調製方法や構造が、触媒活性および選択性に与える影響を明らかにし、さらなる高活性触媒の合成を試みる。既に高活性を維持した状態での固定化には成功しており、さらに研究を推進し、成果の発表を行いたい。加えて、昨年度の研究で見出した金属触媒における表面加速効果や、二酸化炭素変換に活性な有機分子触媒の固体表面への導入も行い、担体表面で発現する特異な触媒作用に関する研究を推進する予定である。
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