本研究課題では固体表面に固定した有機分子触媒の触媒性能を、担体表面の官能基や同時に導入した金属錯体の触媒作用と組み合わせることで、最大限に増幅させ、高効率な触媒反応・高難度な物質変換反応を実施することを目指した。期間内の研究において、シリカ表面に第四級アルキルアンモニウム塩とRh錯体を導入した触媒が、オレフィンのヒドロシリル化反応とCO2とエポキシドからの環状カーボネートの合成反応をワンポットで促進する触媒となることを見出した。表面に存在するアルキルアンモニウム塩の触媒活性は、シリカ担体表面のシラノール基によって増幅され、さらにRh錯体の触媒作用も導入した有機分子によって増幅されることが分かった。結果的に目的のシリルカーボネートが最高で収率99%で得られると共に、様々な構造のエポキシドあるいはヒドロシランが本反応に適用可能であることが分かった。シリカ表面に存在する有機分子によるヒドロシリル化反応の加速効果に関して、詳細な反応機構を解明するため、調製した触媒の低温でのRh K-edge XAFS、固体NMR、in-situ FT-IR測定を実施した。XAFSおよびNMR測定の結果から、有機分子はRhへ直接相互作用するのではなく、周辺の配位子へと影響を与えていることがわかった。さらに、IR測定の結果から、ヒドロシランの存在下において配位子の脱離が促されていることが分かった。以上の結果から、有機分子とRh錯体との極めて弱い相互作用によって配位子の脱離が加速されることが示された。本研究ではさらに、CO2の変換反応を加速させるための有機分子触媒の設計にも取り組み、ギ酸アルキルアンモニウム塩が活性な触媒となることを見出した。さらに、ギ酸塩触媒の局所構造を維持したまま担体表面への固定化にも成功した。
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