研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04244
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
稲垣 冬彦 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80506816)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Z型配位子 / 金属錯体 / 触媒反応 / 環化 |
研究実績の概要 |
1.緒言 遷移金属触媒反応では、中心金属だけでなく配位子も反応性に大きな影響を及ぼす。Greenらの定義に基づくと、L型(リンや窒素等)、X型(ヒドリドやアルキル基等)、Z型(ホウ素やアルミニウム等)の三種に分類される 。これまでに開発された遷移金属触媒反応の錯体に用いられる配位子に着目すると、そのほとんどはL型やX型に分類され、電子受容性のZ型配位子を用いた例は限られている。 2.Z型配位子含有金錯体の合成とその触媒反応による7員環構築 我々は、Z型配位子の電子受容性が、中心金属の電子密度を下げてそのルイス酸性を向上し、新たな反応性創出をもたらすのではないかと考えた。そこで、Bourissouらの錯体を参考に、Z型配位子(ホウ素)を有する新規金錯体[Au(DPB)L]X (DPB = diphosphine-borane)を各種合成した。また、その触媒反応を検討したところ、エン-イン体を用いた分子内[2+2]環化付加反応やイン-ジオール体による連続的7-exo型環化反応において、7員環を効率的に構築可能であることを見出した。 3.1価のZ型金触媒を用いたその他の環化反応 空気中の二酸化炭素を利用した室温下でのプロパルギルアミン誘導体との触媒的環化反応やアルキン酸-アルケンとの分子内[4+2]環化付加反応において、一般の金触媒よりもZ型金触媒を用いた場合に良好な収率で目的の環化体が生成した。 4.3価のZ型金触媒を用いた環化反応 Z型配位子は中心金属の電子を受容するため、金属のd電子数や形式酸化数に影響を及ぼす可能性がある。より強いルイス酸性の獲得を目的に、一般的な3価の金にZ型配位子を導入したAu(DPB)Clを合成し、そのカチオン性触媒[Au(DPB)](SbF6)3をイン-インドール体と処理したところ、ダイマー型環化体がジアステレオ選択的に得られることを見出した。これは、2つの7員環と1つの5員環に加え、スピロ原子を含む2つの四級炭素を一挙かつ高立体選択的に構築している点に特徴を有している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りではないが、Z型配位子が金属の形式酸化数へ及ぼす影響を利用した従来にない反応場の構築に成功し、新規反応性創出に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、錯体の構造からZ型配位子が及ぼす影響等を分析、考察し、新規反応についての論文作成を行う。また、本触媒のトリカチオンの状態での安定化を図ると共に、その触媒を用いた新規反応性の創出も検討する。
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