公募研究
今年度は、特にHeck反応におけるイミダゾピリジンカルベン配位子の電子的な効果を詳細に検討した。この検討に先立ち、イミダゾピリジンカルベンの特に受容性の制御に鑑み、イミダゾピリジン骨格の1位に対して種々のアリール基を導入した。このアリール基導入により、期待される受容性の変化について、DFT計算によるフリーカルベン状態の相対的な受容性軌道のエネルギー準位の変化を合わせて見積もったところ、導入するアリール基により受容性軌道を容易に制御出来ることがわかった。このとき、従来型NHCであるIMesやIPrを含むいずれのNHCでも供与性軌道のエネルギー準位にはほとんど差はなく、IPCにおいては、置換基の影響により受容性軌道のみが顕著に変化することが見積もられた。一般に受容性の高い配位子は、錯体を形成した際、電子不足型の金属中心を導く。結果として、遷移金属触媒反応の素反応の中では、とりわけ不飽和結合の配位、転位挿入、β脱離の段階を促進することが期待された。実際、4-methoxystyreneとiodobenzeneの反応では、従来型NHCと比較し、IPCを用いる反応において、顕著な加速効果が見られ、さらに、より受容性軌道のエネルギー準位が低いIPCほど高活性な触媒を導いていることが示された。なお、今回合成したIPCの%Vburを見積もったところ、いずれのIPCでもほぼ同じ値を示しており、ここでの結果は電子的な影響のみが反映されたものと考えられる。以上、本年度の検討において、立体環境に影響を及ぼさないIPCの電子的性質の制御法を確立し、それらが顕著に触媒活性に影響をあたえることを明らかにした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: 93 ページ: 332~337
10.1246/bcsj.20190333
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
巻: 77 ページ: 776~790
10.5059/yukigoseikyokaishi.77.776