研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04253
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 3d遷移金属触媒 / スピンクロスオーバー / 溶液XAFS測定 / 溶液磁化率測定 / 溶液EPR測定 / スペクトルシミュレーション |
研究実績の概要 |
触媒設計により律速段階における活性化エネルギーを低下させる方法だけでは限界がある場合 もある。その際には、問題となる律速段階を回避する様に反応経路を設計した触媒反応を検討することが重要となる。本提案研究では、ニッケル錯体のスピンクロスオーバーに着目し、一重項状態とは異なる特徴を有するラジカル的な反応性に富んだ三重項状態のニッケル錯体の反応性を活用する反応経路設計を行い、新規触媒反応の開発を実施した。スピンクロスオーバーによる 『two-state reactivity』を活用して反応経路を改変することで高難度物質変換の実現を検討した。”電子効果と立体効果”に加えてスピン状態を考慮した触媒設計と反応経路設計により、ニッケルを用いる触媒反応開発の可能性が潜在的に広がることを明らかにした。具体的には、アルキンのヨウ化アリールによる分子間カルボヨウ素化反応が進行することを新たに見いだした。ニッケル(0)錯体およびビピリジン配位子存在化、種々のヨウ化アリールがアルキンと反応することにより、ヨウ化アルケニルが得られることを見いだした。種々の官能基を有するヨウ化アリールを用いた場合にも、対応するヨウ化アルケニルが得られた。例えば、臭素やホウ素エステル基を有する基質を用いても、目的化合物が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炭素-炭素不飽和化合物のカルボハロゲン化反応による有機ハロゲン化物の新規合成法を開発した。ニ ッケルを触媒とするアルキンとヨウ化アリールによるカルボヨウ素化反応を基にして反応開発を実施した。反応は『基質の組み合わせ』としては極めて単純ではあるが、未開発の反応である。研究方法として、触媒反応開発とともに、触媒および中間体のNi-K端溶液XAFS測定やEPR測定などの溶液分光測定を行い、これらの結果をもとにして理論化学計算を実施することで反応機構を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、反応開発と理論化学計算および溶液分光測定を組み合わせた研究方法の有効性を示してきた。今後の研究推進方策として、新規触媒反 応開発に留まらず、溶液XAFS測定やEPR測定などの分光測定を実施するとともに、これらの結果を活用した理論化学計算を行い触媒機能の解明を実施すること で、3d遷移金属錯体を用いる反応におけるスピンクロスオーバーに関する知見を得る。
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