研究領域 | 高難度物質変換反応の開発を指向した精密制御反応場の創出 |
研究課題/領域番号 |
18H04270
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
藤枝 伸宇 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00452318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工金属酵素 / シクロプロパン化 |
研究実績の概要 |
天然の金属酵素は常温常圧下といった温和な条件下において非常に高難度な反応を触媒するものが多数知られており、有機合成化学などへの応用が期待されてきた。しかし、一般的に金属酵素は不安定であり、汎用性も低いため、そのままでは利用できない場合がほとんどである。このような問題を解決するため、酵素の活性中心を模倣した小分子金属錯体が数多く開発され、多様な反応に応用されてきた。一方、最近では、より温和な条件でも高い反応性と選択性を発揮する触媒の開発をめざして、タンパク質の精密制御反応場としての有用性と遷移金属の触媒機能を巧みに組み合わせた新しいハイブリッド生体触媒(人工金属酵素)の開発が活発に行われている。こういった背景のもと、我々のグループはタンパク質配位子として超好熱菌Thermotoga maritima由来のTM1459タンパク質に着目した。このタンパク質は、高い熱安定性を有し、cis位に空いた配位座を提供可能な4つのヒスチジンからなる金属結合部位を備えている。これらのヒスチジン残基に金属イオンを結合させることで、タンパク質骨格がより安定化され、非常に安定な生体触媒の構築が可能となる。さらに、様々な遷移金属イオンを導入することで、多彩な触媒機能を期待出来る。これまで、我々はTM1459タンパク質を配位子として、高い反応性、選択性を達成したアルケンのcisジオール化反応2やマイケル付加反応系を構築してきた。そこで本年度では、このTM1459タンパク質を金属配位子としての汎用性を向上させるため、オレフィンの立体選択的なシクロプロパン化反応について検討を行い、困難とされているシス選択的反応系の実現を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにシクロプロパン化反応に用いられてきたbis(oxazoline)骨格を持つBOXやPyBOX配位子のような二座もしくは三座の窒素系配位子を模倣し、4-His部位のヒスチジンの1つ、及び2つをアラニンに変異させることで、様々な第一配位圏を包括した変異体を構築した。これら変異体に、銅(II)を導入し、単核銅タンパク質ライブラリーを調製した。次に、これを用いて、基質としてスチレンとエチルジアゾアセテート(EDA)を用いたシクロプロパン化反応についてスクリーニングを行った。銅(II)のみを触媒として用いた場合、1: 2の割合でtrans体が優先的に生成され、エナンチオ選択性は全く見られなかった。それに対し、H52A変異体を用いた場合、高いcisジアステレオ選択性 (89: 11)とエナンチオ選択性 (56% ee) を示した。さらに、H58A/H92A変異体を用いた場合では、高いtrans選択性 (24: 76) を示し、反転したジアステレオ選択性をもつ変異体を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は第二配位圏の残基にさらなる変異導入を行い、さらなる選択性の向上を試みる。H52A変異体にCuを導入した結晶構造をもとに基質であるEDAとタンパク質キャビティのドッキングシミュレーションを行ったところ、一方の基質であるスチレンが間隙の広い側から銅に結合したEDAに接近することにより、高いcis選択性を示したと推測された。そこで、スチレンの接近方向を制御するため、キャビティを形成するアミノ酸残基 (R39, C106, I108, A52)に着目し、さらなる変異導入を試みる。また、他のC-C結合反応にも挑戦する。
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