研究実績の概要 |
昨年度まで検討を行ってきたチェーンウォーキングを経る様々な1,n-ジエン類の不斉環化異性化による五員環形成反応に関して、今年度は更なる基質検討の実施、およびその手法の確立について検討を行った。昨年度までの不斉収率決定法では形成した五員環骨格上にイソプロピル基をもたない生成物のエナンチオ選択性の決定は困難であったため、今年度はまずキラルカラムを用いたHPLCによる分析法を検討し、またこれを用いた不斉収率決定手法を確立した。続いて、本手法を用いて様々な1,n-ジエンの不斉環化異性化反応の検討を行ったところ、基質による反応性の違いが確認され、70%以下程度の不斉収率で環化異性化生成物が得られることが分かった。まず、末端アルケン部位に代えて内部アルケン部位をもつ基質を用いたところ、以前の基質と同様のエナンチオ選択性、および中程度の収率で目的物が得られた。一方、末端アルケン部位を1,1-二置換アルケンとした場合には、反応はほとんど進行しなかった。また三置換アルケン部位(プレニル基)を1,2-二置換アルケンとした場合には、高収率で反応の進行が確認できたものの、エナンチオ選択性は大きく低下する結果となった。またプレニル基の二つのメチル基をエチル基とした場合には、収率、エナンチオ選択性がともに低下したが、プレニル基の2-プロピリデン部位をシクロヘキシリデン部位に代えた場合には、収率、エナンチオ選択性ともに、若干の低下にとどまった。
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